Recharge
□【一章】再装填
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「…残念ながらそれは君の勘違いだ。俺としてはそうなって欲しいものだがな。」
秀くんの言葉の意味がわからず首を傾げていると、薫くんは「はーー。」と大きく息を吐いた。
その表情を伺うといつもの薫くんに戻っていて、ピリついた雰囲気もなくなっていた。
先程は出てこなかった言葉も、今ならちゃんと伝えられそうだ。
「薫くん、秀くん。
配慮が足りなくて、迷惑をかけてしまってごめんなさい。これからは来る前には必ず連絡します。」
しっかりとお詫びをすると、今度は薫くんは「ん?」と小さく声をだした。
「組織の事がひと段落つくまで、ここにはあまり寄り付かないようにするね。」
「え?!」
なんで?!と驚く薫くんと、大きな溜息をつく秀くん。
「はぁ………杉下君、全て君のせいだからちゃんと誤解を解くんだ。」
それから秀くんのフォローもあり、薫くんが突然の訪問に怒っていた訳ではないと説明してくれた。
「…っていうか、本当はもっと帰ってきて欲しいくらいなんだけどなぁ。」
「そうだな、偶には羽を伸ばしに泊まりにくるといい。いつも"江戸川ハム子"じゃあ気も休まらないだろう。」
「そうだ久しぶりに公子ちゃんの作った肉じゃがが食べたいなぁ。ね、今日はこのままゆっくりしていこうよ。」
輝いた目で見てくる二人の期待に応えるように頷いた。
「明日学校だからお泊まりは難しいけど、肉じゃがは作ってくね。」
「ありがとう!よし、それなら仕事も早く仕上げてくるよ!」
「薫くん、頑張ってきてね。」
気合十分にリビングを出て行く薫くん。
美味しく作らないとな、と、こちらも気合を入れてキッチンへ行くと、その後ろを秀くんが着いてきた。
「公子、料理をしているところを見ても構わないか?」
「うん、勿論。折角だから秀くんも一緒に作ってみる?」
「……あぁ。」
どこか緊張した様子で返事をしていたので理由を聞いてみると、秀くんはあまり料理をしたことがないらしい。
だから料理をしているところがみたかったのか、と納得しながら二人で台所に立つ。
食材を準備し野菜の切り方を教えると最初こそ恐る恐るといった様子だったが、あっという間に慣れたようだ。
「やってみると中々楽しいものだな。」
料理という未知の世界に好奇心が刺激されたのか、秀くんはどこか楽しそうに呟いた。
「ふふっ、それならまたお料理教室を開こうか?」
忙しくない時に、ちょっとした息抜きで、くらいの感覚で自炊できるようになれば何かと便利だろう。そう思って提案すると、秀くんは柔らかく微笑んだ。
「そうだな、頼む。」
「任せて!」
月に1〜2回料理を教えに自宅へ行き、そのまま一緒に彼らと夕飯を食べるようになった。
その食事中に、秀くんが煮物やカレーなどの煮込み料理を練習がてら作るようになったという話を薫くんから聞くのはまた後日のお話。