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□【四章】浪花の物語
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ー公子視点


試合会場を後にし、今は服部くんの自宅でテッチリをご馳走になっている。

ぷっくりと弾力のあるフグ、色とりどりの野菜、そして縁の下の力持ちとして旨味を支える出汁。
全てがうまくかけ合わさっていて、食べた瞬間声がでた。

「おいしー♡」

「すごく美味しいです!」

「こりゃー最高だ!」

「当たり前や、オカンのテッチリは天下一品やからな!」

箸が止まらないとは正しくこのことでパクパクと食べ進めていると、服部くんは嬉しそうにニコニコと笑って見ていた。

(テッチリを食べにこい!なんてお母さんの料理自慢をしたがったり、料理を褒められて喜ぶなんて服部くんも可愛いよなぁ。)

確かにこれだけ料理上手なら自慢したくなる気持ちもわからなくはない。
それに服部くんのお母さんも人に食べてもらうのが好きなのか嬉しそうな表情で私達を見ていた。

「ホンマ三人ともいい食べっぷりで、作った甲斐があるわぁ。」

「本当美味しくて!フグも勿論だけどお出汁が何か違うのかなぁ…。」

昆布だしに何か秘訣があるように思い、出汁を飲みながら舌で探っていると服部くんのお母さんが目を光らせた。

「ハム子ちゃん、よぉ気付いたな〜!お料理とかするん?」

「あ…、葵おにいちゃんのお手伝いを少しだけ…。」

「えらいわぁ!ほんなら美味しいお出汁の取り方を教えたるよ。」

「本当ですか?是非教えて下さい!」

「平次は見ての通り食べる専門やし嬉しいわぁ〜!」

これだけ美味しく出汁が取れれば味噌汁から煮物までワンランク上の味になるだろう。
私としては料理の腕が上がるのは有難いし、服部くんのお母さんも料理を教える存在がいて喜んでいるようだ。
需要と供給の一致にお互いニコニコとしている中、服部くんは悪く言われたように捉えて少し青筋を立てていた。

「食べる専門で悪かったなぁ…!」

「まぁ平次に教えるんは諦めたけど、そろそろウチの味を教える子を連れてきたってもえぇんやけどなぁ。」

服部くんのお母さんは、はぁーあ、と大きなため息をついた。
そろそろ彼女(味を受け継ぐ嫁)でもつくって呼んでこないのか…と言っているようだが、現代っ子の服部くんには"味の伝統"というイメージがないらしく頭を捻っていた。

「あ?他なんて必要ないやろ。ハム子がウチの味守ってくれるみたいやし。」

服部くんの返事は『味を伝える弟子はもういるだろ』というだけなのだろうが、お母さんの言葉に対してその返事はまるで私がそういう相手だと言っているようにも聞こえる。
服部くんのお父さんと葵くんも意図を理解した上で聞いていたようで、服部くんの返答にギョッとした顔で見ていた。

遠山さんが気にしなければいいなーとこっそり顔色を伺ってみたが、服部くん同様意図に気付いていないのか気にした様子がなく安心した。
  

「え、毛利くん料理するん?」

「あ、あぁ。うちの母さん料理下手だったから小さい頃からやってたんだ。」

「英理の料理は下手ってレベルじゃなくて殺人レベルだろーがぁ!
いやー、本部長が羨ましい限りですなぁ!」

お酒の入ったおじさんはテンション高めに服部くんのお父さんに絡んだ。

いつも服部くんに厳しくしているイメージがあるのでどんな反応をするのかと静かに観察すると。

「……そうですね、良い妻ですわ。」

(無表情だけどデレてる!!)

服部くんのお父さんの意外な一面を発見した日だった。


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