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□【四章】浪花の物語
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ー近畿剣道大会当日

オカンのテッチリ食わせたる!と誘い文句で工藤達を大阪まで呼んだが、工藤達の空いている日が剣道の大会だったので日中は相手にできないと話をしていた。
だというのに、当日になって観光に行かずに応援に行くと言われて驚いたものだ。

それを聞いてからはまるで授業参観でソワソワするガキみたいに緊張と嬉しさが混じりあって試合どころではなくなっていた。


「えぇか、もっぺんゆうで!
浪花中央体育館は新大阪の駅でたら東尻行きのバス乗って七つ目や!
わからんかったらバスのおっちゃんによー聞くんやで!
この服部平次が活躍する近畿剣道大会の会場はどこで降りたらええんかってな!」

「うん、わかってる。何度も何度も聞いたから大丈夫。
それにスマホだってあるし、おじさんと葵くんもいるから。」

「スマンなぁ…心配になってしもて。」

「もー、見た目は子供だけどちゃんと中身は大人だから迷子にならないし大丈夫だよ!」

自信満々な声に静かにため息をついた。

(はー…心配なんはそっちやあらへん…。)

天性レベルの事件ホイホイだけでなく幼児化によるちんまり具合。妙な輩に妙な気を起こさせるには充分過ぎるのもあって正直気が気じゃなかった。

「今度はちょっと迎えに行かれへんししゃーないやろ。」

「こっちの地理には疎いしありがたいけどさ…それよりも服部くんは大丈夫なの?」

「試合か?そんなん負けるはずあらへんて!」

心配性なやっちゃなぁ〜。なんて思っていると、盛大なため息が聞こえた。

「勝敗云々の前に、試合会場に居なくて平気なのか?ってこと!私に電話なんてしなくていいからちゃんと皆んなのところにいなよ。」

「せやかて工藤…、」

「せやかてじゃない!
折角服部くんの応援に大阪まで来てるんだよ。主将不在で敗退なんてことになったら…。」

工藤のしょぼくれた声に慌てて返事をする。

「わかった、わかった!
その代わり絶対決勝には間に合うんやで!」

「うん、絶対に間に合うように行くよ!だから服部くんも頑張ってきてね!」

「へーへー、ほんなら切るで。」

適当に返事をして電話を切る。

(京都泉心高校の沖田と当たるまでは体力温存するつもりやったけど…ま、やったるか!)

応援されたからにはやったろう!と試合に出て、ベスト4までチャッチャと勝ち上がった………そんな時、他のチームから不穏な会話が聞こえてきた。

「た、垂見が殺された?」

「う、うん…まだ死んでるかどうかわからんけど、血まみれやった…。」

小太りの男の表情が酷く青褪めていて、その言葉は冗談なんかには聞こえなかった。

「おい、どこやそれ?」

「え?」

「何やおまえ…。」

「そいつがどこにおんのか聞いてんねや!!」

もしかしたらまだ息があるかもしれない…そんな僅かな希望を持って事件現場へと向かったのだが…。
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