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□【三章】高校生探偵
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「こんにちはハム子ちゃん、今日も可愛いな!。」
「世良おねえさん、こんにちは!
葵おにいちゃんもお帰りなさい。」
笑顔で挨拶を返してくれるハム子ちゃんを見て、今日寄ってよかったと心底思う。
「そういえばさっき平次にぃから電話があったんだけど、これから東京に遊びに行くからよろしく…だって。」
「「は?」」
いきなり彼女の口から親しげな呼び名の男の名前が出てきて思わず声が出る。
毛利くんは毛利くんでなんだかうんざりとした様子だ。
「アイツなんでまた東京に来るんだよ…。」
「ハム子ちゃん!平次にぃってダレだよ!」
同時にしゃへりだすボク達に対して、彼女は簡潔に答えた。
「なんか事件の事を聞きにくるんだって。
平次にぃは西の高校生探偵で服部平次くんっていうんだ。」
「そうなんだ…別に東京来る度に寄ってこなくていいんだけど。」
毛利くんの様子を見る限りあまり歓迎していないらしい。
余程頻繁に来ていてうんざりしているのか、それとも相手が一方的に友達だと思っているが毛利くんは苦手なのか。
ハム子ちゃんは仲良さそうな呼び方をしている(ボクなんて世良おねえちゃん呼びなのに!)だけあって、服部平次に対する二人の温度差が何だか気になった。
「ふぅん……その服部ってヤツはなんで態々ここに寄るんだ?毛利くんのその感じだと特段仲がいいようにみえないけど。」
ストレートに聞いてみると毛利くんは黙り込んだが、一瞬、ハム子ちゃんに視線を向けたのをボクは見逃さなかった。
「……へー。」
その人物の目的をなんとなく理解する。確かにそれならば毛利くんが嫌がるのも納得だ。
(…………ボクも邪魔してやる。)
嫉妬心からそう意気込みをいれるが、ボクはまだ敵の情報を僅かにしかもっていない。一先ず情報収集をしようとハム子ちゃんに目線を合わせる。
「ねぇ、ハム子ちゃん!ところでその西の高校生探偵の実力ってどんなモノなんだ?」
「どのくらいの実力って言われると難しいけど…大阪で難事件を解決させたり大活躍してるんだよ!」
彼の実力を認め、活躍を喜んでいる姿が更にボクの嫉妬心を煽った。
「ヘェ〜、それならその実力を見てみたいところだな。女子高生探偵と西の高校生、どっちが名探偵なのかね!」
「うーん、二人とも同じくらい凄いからなぁ……。」
心底そう思ってくれているのはわかっているけれど、ボクだけが誉められたい。そんな欲求がムクムクと湧く。
「いや、ボクの方が…」
「西や!」
ボクの言葉を遮る様に男の声がした。
「この西の高校生探偵、服部平次の方がめちゃめちゃ上やっちゅうんじゃボケ!!!」
ドアを乱雑に開けながら出てきたのは、色黒関西弁の男だった。
「服部!」
「平次にぃ!」
「ふーん、キミが服部君ね……。」
「あん?なんやオマエ?」
明らかに敵対心剥き出しで絡んでくる辺り、さっきの話を立ち聞きしていたのだろう。まぁ、そんなのには負けないけど。
「ボクが女子高生探偵の世良真澄。よろしくね、西の高校生探偵君。」
「ふーん、ジブンがなぁ…。
せやけど東の女子高生探偵といえば工藤公子やろ。
ちゅうことは東と西で"対"になっとる俺のが上ってことやな!」
「はぁ〜?!」
突然のマウントに苛立ちを隠さずにいると、余裕そうな表情で更に煽ってきた。
「なんや文句あるんか〜?」
「文句あるに決まってるじゃないか。西の高校生探偵なんてボク聞いたことないけど?君、本当に彼女程の実力があるの?」
「ハッ!ジブンこそ新聞のひとつでも読んだ方がええんちゃうか?」
「ごっめーん、ボク帰国子女だからさ。地方新聞までは網羅できてなかったよ。」
ああいえばこういう。
ポンポンと行き交うやりとりを遮る様に、電話の音が鳴った。
「なんや和葉!いま大事な話をしとっ………ハァ?人が死んだやとォ?!殺人か!?わかった!すぐそこに行ったるから待っとけよ!!」
服部くんは電話を切ると、ハム子ちゃんの方を向く。
先程ボクと言い争いをしていた時とは違う柔らかな口調に、毛利くんが嫌がった理由が当たってることを確信する。
「…ちゅうわけやから、ちょっと行ってくるわ。」
ちょうど事件もあったことだし、実力を比べる絶好のタイミングだ。ボクは勝負をしかけることにした。
「……じゃあこうする?
この事件でボクと君、どっちが上かはっきりさせるっていうのはどうだ?」
「は?」
「言っていただろう?自分が工藤公子と肩を並べる高校生探偵だって。」
「せやからなんや。」
「もし君が勝ったらそれを認めてあげるよ。」
「そんで、もし俺が負けたらジブンの方が工藤と肩を並べるのに相応しい……って言いたいんか?」
「モチロン!」
何となく渋っている様子があり、口だけのやつなんだろうと思った。