Recharge
□間章
2ページ/13ページ
ポアロ <公子編>
安室さんがおじさんに弟子入りした次の週の土曜日の朝。
葵くんは早朝から空手の試合で遠征に行き不在、おじさんの依頼もなくのんびりとした朝の時間を過ごしていると、コンコンとノックが鳴った。
「おはようございます、毛利先生!」
いつもの零さんよりも声もテンションも少し高め、かつ爽やかさも増量した"安室さん"が、元気のいい挨拶と共にドアを開けた。
「ハム子ちゃんもおはよう。」
「おはようございます、安室さん。」
こんな朝からどうしたのだろうと思っていると、安室さんはおじさんの前へと足をすすめた。
「毛利先生、朝からすみません。今日は一つご報告があってきました。」
「あん?」
「この度、下のポアロでのアルバイトが決まりました!」
「おお、そりゃ良かったな!!」
おじさんは安室さんの懐具合を気にしている様子があったので純粋に喜んでいた。
…まぁ、それなら授業料を取らなければいいのにと思わなくもないが、それはそれ、これはこれなのだろう。
「ポアロのマスターには事情を話して都合をつけれるようにしていますから、引き続き探偵修行はやらせて下さいね!」
「お…おう、頑張れよ。」
「安室さん頑張ってね!」
トリプルフェイス大変そうだなぁと心配をしつつも原作通りの展開になったことに安心していると、安室さんは私の方に振り返りニコリと笑った。
「ハム子ちゃんも何か用事があったら遠慮なく声を掛けてね。」
声と笑顔は安室さんだけど、"零さん"の圧を感じた。
忙しかろうが何かあったらちゃんと連絡するようにという事なのだろう。
「は、はーい。」
忙しそうだしこれからは少し遠慮したほうが良いかな、なんて一瞬頭をよぎったのを見抜かれているようで苦笑いしながら返事をした。
「では、僕はこれから初出勤なので失礼します。」
今日はその報告だけだったのだろう。
「それでは」と去って行くのを、「頑張ってきてください!」と笑顔で見送った。
ーそれから数時間後
「ハム子、いま葵からメールがあったけどみたか?」
「え?あ、うん、見たよ。
葵おにいちゃん勝ったみたいだね!」
空手部の団体戦・個人戦共に優勝した旨がメールに送られてきていた。
「だな、そんで昼飯なんだけど…。」
葵くんの報告から突然お昼ご飯の話題に飛び、しかも何処か歯切れの悪い様子を不思議に思いながら次の言葉を待つ。
「あー…今日はポアロでメシにするぞ。ナポリタンって気分だからな!」
いつもだったら「今日はナポリタン食いにいくぞ。」くらいの感じで半ば強制的に連れて行くのになんで今日は言い淀んでいるのだろうと疑問に思っていたが、店内に入りその理由がわかった。
…おじさんは安室さんの様子を見に来たかったらしい。
事件で連れてくかもしれないから…とこっそりマスターに挨拶をする姿もあり色々と納得した。
なんだかんだおじさんも安室さんの弟子入りが嬉しいんだろうなぁと感じた一日だった。