Recharge
□間章
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ポアロ <降谷編>
ベルモットからの依頼により毛利探偵事務所へと転がり込んだが、監視と繋がりを強くする為(という姿を見せるためにも)探偵事務所の階下にある喫茶店で働くことになった。
しかし、事の発端は理事官にベルモットからの依頼について報告をしたところにある。
「…成る程、それなら毛利探偵事務所の下にあるポアロで働くといい。」
そう言われた時はよく店名まで覚えていたなと感心していたが……まさか個人経営の喫茶店のマスターが理事官の知り合い(恐らく元公安)の店だったとは思いもよらなかった。
数年前に公子さんと松田と共に利用した時は思ってもいない展開だ。
まぁ、そんなこんなで何かと早退・欠勤するのも承知の上で雇ってもらうことができた。
余談ではあるが、もう一人の従業員は一般人なので巻き込まないように、とだけ注意をされた。
毛利小五郎に報告をした後初出勤をすると、もう一人の従業員….榎本梓は既にカウンターで開店準備をはじめていた。
「おはようございます、今日から一緒に働かせてもらう安室透です。宜しくお願いします!」
「おはようございます、私、榎本梓といいます、これから宜しくお願いしますね!」
エプロンを渡された後、簡単に仕事についての説明を受ける。
それなりの仕事量があったので「一人では大変だったのでは?」と作業をしながコミュニケーションをとってみれば「一年くらい前まではもう一人いたのよ。」と返ってきた。
「そうなんですか?」
「ええ。安室さんよりも歳上の男の人で、長く勤めてたんですよ。
ふふっ…、彼ね、包帯を巻いてるのに平気な顔で出勤してきたことがあるの。あの時はビックリしちゃったなぁ。」
「へぇ…、それは随分仕事熱心だったんですね。」
「よく転ぶみたいで頻繁に怪我をしてたしなんだか危なっかしいところはあったけど、頼りにしていたから突然辞めたって聞いた時は残念だったなぁ……って、そんな事安室さんに話してもですよね!すみません!」
「いえ、僕もその彼と同じくらい働けるように頑張ります!」
懐かしがるような、悲しむような。
まだその時の思い出が色褪せていない様子と、そこに淡い色が残っているのは明らかだったが……それよりも別の情報が僕の頭を流れていた。
(…怪我、か。)
いくら理事官の知り合いとはいえスムーズに受け入れ準備ができたのはそういった理由<前例>があったからか、と納得した。
突然の辞職が"何の終わり"を意味していたのかまでは考えても答えは出てこない。
それでも、元先輩が今もどこかで元気にしているように、と静かに祈った。