月白風清

□intuitive 03
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ピピ―、あはは、パス!


ホイッスルの音。笑い声。試合をしている声。






平日の昼前にも関わらず、フットサル場は私の想像以上に込み合っていた。

そこにいる人は私と同じような中学生か、
会社勤めを辞めた老人が9割を占めていた。

見知った顔はほとんどおらず、
何となく見たことのある顔の男の子はいたけれど、
それは隣のクラスの男子生徒で、
特に挨拶をするほど仲が良い人物ではなかった。





なっちゃんから教えて貰った特徴を想い出し、

フットサル場と道を隔てるフェンス越しに探してみた。







「日焼けしてる人…、多いな!」

今は夏。今日も日差しが強い。

人が多くてヒントから、黒川先輩を見つけるのはなかなか難しそうだ。









「なにしてんの。入らないの?」


突然後方から聞こえた声。

振り返ると一人の女の子が立っていた。





「あの…」


女の子もフットサルするんだな、と頭の隅で思った。


質問されたことは気づいていたし、
内容も理解できたのだが、
初対面のこの子が端正な顔立ちでつい見とれてしまい、
すぐには反応できなかった。





「ここ入口、そこに立ってられると邪魔なんだけど?」

「あ、ごめんなさい!すみません!」



ここが入口だと気づかなかった私は慌てて
一歩、二歩とフェンスから離れる。








「なに、誰か探してるの?友達?」

「あ、はい。でも友達というわけではなくて…」






まさかこの子に黒川先輩とのいきさつを話すわけにはいかなかった。





「ふぅん、なんて名前?僕が呼んであげようか」

「え、でも…」




「さっきから見てたけどしばらくきょろきょろしてるから、
なかなか見つけられてないんじゃないの?
ずっとそうしてられるとこっちも気が散るんだけど」

「はい、おっしゃる通りです…」




初対面なのにこんなに堂々と話せるなんて
凄いな、と感心してしまう。

なっちゃんといい、美人の人は自分の思ったことや考えを
堂々と話すことができる。

私はたくさん考えないとなかなか言葉に出来ないから本当に羨ましい。

自分に自信がある人って、かっこいいな。









「で、なんて名前のやつなの?」

「黒川、先輩です…」






「まさきー」

初対面のその子は、フットサル場に向かって大きな声を響かせた。

その場にいたほとんどの人が、
声のした方向、つまりこちらに目を向ける。



すると、少し離れた場所でボールを蹴っていた人物が
不思議そうに首をかしげて、こちらを見ている。



あ、あれが、黒川先輩…。




名前、マサキっていうんだ…。



下の名前知ってるってことは、この子黒川先輩の知り合いなのかな…。




少しすると、駆け足でこちらに近づいてきた。







「良かったな、柾輝もう来てたよ…って、いない?!」























「あれ?俺のこと、呼んだ?」

「ごめん、別のやつが探してたんだけど、どこか行っちゃったみたいで」
















私、逃げました。








だって、黒川先輩、色黒のギャル男だったんだもん!!!!













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