ぐっどらっく!

□きらきら、ちゃぷん。
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 ──きらりと、濃紺の空に一際輝く星を見つけた。

「─あ、あれははくちょう座かな。」
「え、ど、どこどこ」
「ということは……あ、やっぱり。ほら、ねえ蒼。夏の大三角だよ、あの三つを繋いで……」
「え、いやあの、まず最初の一個も分かんないんだけども……!」

 少し揶揄えば、面白いくらいに良い反応を返してくれるものだから。悪いとは思っていてもついつい、揶揄う手も口も止まらなくなってしまう。

 拗ねたようにじとっと半目でこちらを睨む彼女は、はっきり言って怖くないし、寧ろおかしな表情で面白い。そう考えていたら顔に出たのか、彼女は益々じっとりと睨む目を鋭くした。

「はは…ごめんごめん。」
「許さん…」
「まあまあ……ほら、今度はちゃんと教えてあげるから。」

 もっとこっちにおいでよ。

 言いながら、今まさに少し間を開けようとしていた蒼の肩を引き寄せた。
 ぎゃ、という彼女の驚いた素の声。すっかり冷たくなった、ステンレスのマグカップの中のココアが、ちゃぷんと音を立てて、そうして、肩と肩が触れ合う。ピンと張り詰めた夜の空気に冷え切ってしまった身体に、衣服越しにお互いの体温が緩く伝わっていく。

「うー…さむ…」
「昼間はあんなに暑い暑いって言ってたのに」
「よ、夜の砂漠がこんなに冷えるなんて知らないよ……てか知ってたなら教えてくれてもいいじゃん……今夏じゃないの…さっむい……しぬ…」

 大袈裟だなあ。自分とは違い、野営なんてする必要も無かったのだろう至って平凡な人生を送ってきた彼女の、想像していた通りのその反応にまた笑みが零れる。

「でも、約束通りだろう?星の綺麗な所で天体観測がしたいって。」
「…う、いや、そうだけどさ……うん、その点に関しては本当に有難う…こんなとこまで、わざわざ泊まり込みで…」
「なに、お安い御用だよ。これでも僕は野営慣れしているからね。それに、」

 そこで、言葉を一旦切る。二人分の体温を内包した毛布に口元を埋めながら、不自然に止まった会話に、訝しげに彼女が此方へ視線を寄越す。

「──それに、蒼の面白い反応も沢山見られたから。だから、僕は大満足さ。」
「な、なな……」
「砂漠は昼夜の寒暖差が物凄いからね。きっと日中は溶けて、夜中はこうしてくっつかなければ寒い寒いって連呼するのは、何となくだけれど、うん。」
「か、確信犯かお前ー!」

 このやろ、と女の子らしくない乱暴な言葉遣いで、触れ合った肩を少し強めに、顔を真っ赤にしながらぶつけてくる。

 それに、僕も笑いながら応えれば、そのうちに段々、彼女の口許も緩んで。

「……ふ、ふふっ…ごめん、なんか、テンションおかしい、かも…」
「僕も、いつもよりも……そうだね、少しどきどきしてる…のかも。」
「えぇー? またまたそんな事言って。思わせぶりな言い方は女子相手に優しくないぞ、英雄王。」
「あれ、バレてしまったか。…ふふ、でも僕も、楽しい事には変わりないよ。」

 互いのマグの中のココアをちゃぷちゃぷと揺らして笑い合いながら。僕らは暫く、星空の下で身を寄せ合っていた。




きらきら、ちゃぷん。



(2人はちゃんと毛布以外にも防寒対策はしてます。マルスさんがいるのでばっちりです。)


▽ 夢主はファイターの1人。Miiファイター枠です。剣術タイプなのでマルスその他FE組と仲良しだと私が嬉しい。割と誰にでもアクティブかつオープンな未成年。綺麗な空とか眺めるのが趣味。
 


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