ぐっどらっく!

□ひかりかぜ
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 お昼ご飯を作り終わるまで、私達は遊びに行ってもいいと言われた。
 お手伝いもしたかったけど、やっぱり他の子達とも遊びたいという私の気持ちは、準備をしていたマリオさんとリンクさんの二人には、簡単に見抜かれてしまったようだった。
 よろしくお願いします、と頭を下げてから、早くと遠くで手招きをしているネスとトゥーン、コリンの元へ走る。

 ──因みにトゥーンとコリンというのは、私がトゥーンリンクとこどもリンクに付けた渾名なのだ。だって、リンクってば多過ぎるんだもん。



 朝早くからバケツをひっくり返したようにざあざあ降っていた雨は、お昼ご飯の前になってようやく止んだ。そんなだから、広い一面の花畑は足元がぬかるんで、歩くのだって一苦労。

 でも、雨の残りものを付けて陽の光にきらきら輝く柔らかな花びらを見たら、そんな嫌な気持ちもどこかへ行ってしまった。いつもと違う特別な感じに、わくわくした気持ちがむくむくと沸き上がる。

 ──ふやし鬼する人、この指とまれ!

 花畑の中で、むらびと君がピンと立てたその指を初めに掴んだのは多分、私だったんじゃないかな。

「じゃあ、60数えるからね!」
「ちゃんと逃げてね!でも建物の中はダメだよ!」
「言わなくたってわかってるよー!」
「お面とか使うのもナシだからね!」
「それボクに言ってるだろ!使わないってば!」

 幾つか、笑いながら叫ぶ声が聞こえて。言ったそばから同時に顔を覆って、元気にいーち、にーと数えだしたポポとナナに、わあっと、蜘蛛の子を散らすように他の皆がそれぞれ駆け出し、黄色と緑の中へ溶けていく。
 トゥーンとコリンとリュカは、保護色…になってすぐに見えなくなる。私も、その中に駆け出した。


 ──早く、できるだけ遠くに。

 草やお花に付いた雨が、服や髪をしっとりと濡らしていくのも気にしない。ピーチさんやロゼッタさんには、またあらあらって言われるかもしれないけど。

 早くもない足で、ぱしゃりぱしゃり、水溜まりの上を駆け抜ける。葉っぱに止まっていた蝶が、ひらひらとどこかへ飛び立っていった。

 どこまで行こう。どこまで行けるかな。それ以外、他には何も考えずに、ひたすらに手足を動かした。

 曲がって、走って、また曲がって。どのくらい走ったかなんて、分からなくなって。
 でも、いつの間にか、時々聞こえていたネスやトゥーン達の声が、ちっとも聞こえなくなった頃。沢山走って走り疲れてしまった私は、のんびりと花の中を歩いていた。

「……あれ?」

 ──ふと、暖かな風が吹いた。

 それは、春のお日様みたいな。温くて、少しだけ新緑(初夏)の匂いを含んだ、爽やかな風。それに誘われるように、疲れたことも忘れて駆けていく。

「わあ…っ!」

 駆けたその先には、びっくりするくらいの絶景が広がっていた。
 自分の立つ小高い丘から、下の街が見渡せた。春の陽射しと暖かい空気に、いつもよりも少しだけ、賑わいを増す街。

「綺麗だなぁ…」

 思わずペたんと座り込んで、じいっと見下ろした。あれは、いつもマックさんやWiiFitトレーナーさん達が走ってる道。あれは、リンクさんとかルイージさんがお買い物をするお店。あれは─

 いつも、誰かと一緒にお出かけをする時は、もっともっと大きく見える、私たちの好きな街。でもここだと、まるで全部おもちゃになったみたいに小さいのが、すごく不思議で。

「ここ、素敵なところだなあ…」
「ね、ほんとに!」
「うんうん、すごく綺麗!」
「…へ、」

 ─わあっ! 驚いて、勢いよく尻餅を着いた。花弁が舞って、ぽかんとする私の頭の上にはらはらと落ちる。
 固まってしまった私の頭に、ぽんと優しくトゥーンの手が乗せられた。

「はいラスト! 蒼捕まえた!」
「ほら、お昼ご飯だって。綺麗な景色見るのもいいけど、お腹空いたでしょ? 早く行こう。」

 笑いながら言うコリンにぐいと腕を引かれて立ち上がると、今度はリュカが、背中についていたらしい花弁を払い落としてくれる。

「でも、あんな綺麗な所あったんだね! 私も後でもう一回来たいなあ」
「今度は夜に来るのもいいかも。…ただ、その場合オトナを連れてこないと絶対怒られるだろうけど。」
「じゃあ、今度はオトナもみーんな連れて、一緒来ればいいよ!ここ、星も沢山見れそうだし!」
「それいい!さんせーい!」

 口々に、次にあの丘に行く時の事を話し合う。皆で来ようということを決めてから、話はお昼ご飯のことになって、その後はまた、さっきの鬼ごっこの事になる。

 色んな話を絶えることなくする私たちの帰り道に、優しい光風(こうふう)が吹いていた。



ひかりかぜ



(鬼ごっこは体力の有り余る小学生くらいまでしか出来なかったです……ちなみに光風とは、雨上がりの輝く草木の上を渡る風…の事らしいです。詩的で素敵な言葉ですね。)

▽ 夢主はnotファイター。街の子どもの1人でよく子供組と遊ぶので皆と知り合いになった。お手伝いしなきゃという気持ちもあるけれど遊びたいという子供特有の気持ちに悩まされる女の子。かけっこは遅い方。ネス達より少し年下の為子供組は甘やかし気味だったりすると嬉しい。


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