中編
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エジプト、カイロにある吸血鬼DIOの館。
館の主たるDIOは、まだ完全に自身の頭部になじまずにいるジョナサン・ジョースターの体をけだるげにソファに預けていた。
ジョセフ・ジョースター、そして空条承太郎らに刺客を送り込んでいく日々。
彼らの死の報告を今か今かと待っても一向にそれがやってこないのは、彼らの悪運ゆえか。
しかし、DIOは焦っていなかった。
自身の能力が、時間を止める能力を持つスタンド、ザ・ワールドが彼らを敗北へと貶めるものだと確信していたからだ。
体がなじんでいくごとに止めていられる時の長さが伸びていくのがわかる。
あとたった数人の生き血でその力も完全開放と言ったところなのだ。
思わずあくどい笑みもこぼれるというものだ。
“それ”は、彼の前に突然現れた。
チラリと目をずらしたそのすきに。
流石のDIOもこれには身構えたが、“それ”は動く気配がない。
注意深く、ゆっくりと近づく。
“それ”の正体は少年だった。
承太郎や花京院と同じくらいの年齢だろうか。
短く整えられた髪から覗く目元は堀が深く、眉はほんの少し顰められていたがきりっとしている。そしてあつめのふっくらとした唇が彼を大人びて見せてはいるが、あどけなさが残っているのが伺えた。
DIOには、この少年が何処の誰だか知る由もなかったが、わかった。
こいつはジョースターの血統である、と。
深い因縁のある家系。
忌々しいその気配が、この少年からするのだ。
少年が気絶してピクリとも動かないことをいいことに、DIOは少年の襟首をつかみ、シャツが隠していたそいつの首元をあらわにした。
ある…星形のあざが。
やはり…と眉を寄せたDIO。このDIOに気付かれることなく侵入するとは、とも思ったが、それならこの少年は何故気絶しているのか。
スタンド能力のなせる業ではあると思ったが、攻撃しようとしたのならこの少年は起きているはずだ。
すぐに殺してしまおう、という考えをDIOはこの時捨てた。
少し様子を見よう。そして、ジョースターの血統でさえ、できるものなら利用してやろう、そう思ったのだ。
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