中編

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食事をとりながら、テレンスは説明をする。今は1987年で、ここはエジプト、カイロにあるとあるお方のお屋敷である、と。そうですか、と納得した様子の盛助を見て、テレンスは疑うような目を向ける。盛助はその視線を無視した。


「事情があるのなら、話を聞きましょう」

「…話さなきゃ始まんないッスもんね」


テレンスの提案に、それでは、とたたずまいをなおし、盛助は話し出した。




1999年、知り合いがGW中にエジプトに行くから来るか?なんて言って誘ってきたのがすべての始まり。母親の許可をもらって、地元で起きている奇妙な事件やらに首を突っ込みはじめていた双子の兄も誘ってみたものの断られた。誘ってくれた友人とその家族と、エジプトへ発ち、カイロのとあるホテルに泊まってだらだらと過ごしていたのが1日目。
2日目には観光へ行く予定だった。そんな日の朝、ホテルの近くでテロが起き、逃げ出してきたらしい複数人の実行犯たちが盛助たちの泊まるホテルへと駆け込み、そこで籠城を始めた。反抗した数人が撃ち殺され、盛助たちは人質として囚われてしまった。そんな折に友達が殴られ、思わず声を上げた盛助には銃口が向けられた。覚えているのはそこまで。気付いたらここにいた。



「それで、時間を遡った、とでも?」

「信じられないかもしんないっスけど、まぁ、そういうことっスね。10年以上も遡ったのことはさすがにねぇっスけど」


もらった食事に口をつけながら頷く。それにしても、室内は暗いうえに、寒くないはずなのに背筋が凍るような感覚を覚える場所だと思った。
テレンスはふむ、と顎に手を当てて考えるような仕草をする。そうして答えに行き着いたのか、少し俯けていた顔を上げ、真っ直ぐ真剣な眼差しを盛助に向けた。
ごくり。思わず盛助の喉がなる。


「……まぁ、ありえない話ではないでしょうが」

「えっ?」



まさか信じてもらえると思っていなかった盛助。驚いた拍子にカチャリと食器が音を立てた。自分からこんな話をしておいてなんだが、どういうことだと盛助は驚きの色を隠せない。


「あなたは、"スタンド使い"なのではありませんか?」

「!」


テレンスが背後に自身のスタンド、アトゥム神を発現させる。その能力を使うまでもなくその姿を捉えた瞳が大きく開かれたが、能力を使えばまた一目瞭然だった。並ぶyesの文字。DIOにジョースターの血統であると言われていただけに予想はしていた。東方盛助はスタンド使いだ。



「我が主にお会いください、東方盛助。主も貴方と話したがっています」


盛助は素直に頷くことしかできなかった。



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