本編編

□少女マンガの恋
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「忘れてって…。無理だろ。」
ユフィはヴィンセントのキスの感覚をハッキリと覚えていた。

「だって…。ヴィンセントの味…。」

そして、ベッドにヴィンセントの温もりと香り感じて動揺し、眠ることはできなかった。
幸いにも、エアリス、ティファがそのままクラウドたちの部屋で寝てしまったので夜明けまで戻って来なかった。

ヴィンセントも同じだった。宿の実際の自室に戻っても、ユフィの若い柔らかな身体の感触、潤った唇の感触が残ってしまっていた。着ていたバスローブもユフィのものだった。ユフィの香りがしてとても落ち着かなかった。


そして今入った自身のベッドはとても冷たくて、先ほどのベッドが温かく感じてしまったのは、ユフィがベッドで布団に包まり寝ていたからだ。

ヴィンセントにとっては人の温もりを久しぶりに知ってしまった事すら、罪悪感でしかなかった。

早朝、ユフィがヴィンセントの部屋を訪ねて来た。ユフィはいつもの服。


「あの、ヴィンセント…?忘れてたよ。コレ」

「ユフィ…。」

ヴィンセントはユフィを素早く部屋に招き入れた。そしてベッドで2人で横に並んで座る。気まずい空気が流れたが、ユフィは話した。

「ごめん。服洗って乾燥もしてアイロンもかけといたから。着て。」

「…ユフィ。すまなかった。
この私に…。ここまでしてくれるとは…。ありがとう」

「うん。早く着替えて。そのバスローブあたしの。。昨日着たまま行っちゃうんだもん。困ったー。」

「…うう。昨日から迷惑かけてばかりだな。すまない。すぐ着替える。」

ヴィンセントはユフィの目を気にしながらもその場で着替える。おろしたてのシャツが心地よかった。

「あ、これ買っておいたシャツも渡しそびれてたから。使って。旅にはこう言う用意も必要だよ。一応、アンタより旅慣れてると思うし…」

「ユフィ、何から何までありがとう。
すまなかった。歳下の君にこんなに気を遣わせて。」

「大人だとさ、逆にできなくなる事だってアタシはしてあげたいんだ。仲間にはね。だから、許してあげるね。でも昨日のこと、2人だけのヒミツだよ。」

「ああ、君にしてしまった事も、背負おう。」

「そーじゃなくて、大事な思い出にしてよね。16歳のファーストキスは高いんだから!」

そう言ってユフィは部屋を出た。



(ホント、バカ!こんなこと、誰にも言えないよ…)
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