ヴィンセントとユフィの365日 本編編

□ヴィンセント誕生日
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「そういや、ヴィンセントさん10月13日が誕生日なんですね!」

宿屋の食堂で食事をしているとケットシーがぼそりと言う。
それを聞いて、ティファは食堂に張ってあるカレンダーを
確認すると、

「それって明日よね。」

「それなら、明日の夜誕生日会やりましょう!」

エアリスが提案をした。明日は、一日この街に留まって
誕生日会をやろうと言う。

「いや、しかし・・・、私はそのようなことは。」

「なに?せっかくアンタ棺桶から出て来たんだから、
やろーよ!アンタじゃなくて皆んながやりたいって
言ってんだから、多数決で決まり!」

ユフィはかなり強引だ。だが、そうなってしまうと誰も
ユフィを止められないし、エアリスやティファも乗り気では
クラウドやバレットも何も言えないのは分かっていた。

食事が終わり、部屋に戻り風呂からあがると、私の部屋にユフィが来ていた。これは、いつものことだ。

「今日も一緒に寝ようよ。こないだ寝やすかったから」

私はこのパーティーに加わってからいつも一人でシングルルームで寝ていた。しかし、ウータイでの騒動の後、ユフィをユフィの部屋で抱きしめてあげたのだが、それが随分と気に入ったようで、あれから同じ部屋で寝るようになった。

女性3人の部屋に荷物を置いて風呂も済ませたあと、必ず私の部屋に来て一緒に眠るようになった。本当なら、このようなことはやめるべきだ。ユフィのような年頃の少女が私のような男と一つ部屋でベッドで寝るなど・・・。

だが、私もあれ以来、ユフィを抱きしめて眠ることが心地良く手放せなくなってしまった。情けない話だが、私の方こそユフィに
甘えてしまっているようだ。

「ねえー、ヴィンセント?なんで誕生日のこと教えてくれなかった
のー?」

「この旅に必要な情報か?」

「何言ってるの?大事なことなのに。」

「・・・」

「でも、なんでケットシーがヴィンセントの誕生日知ってん
の?」

「それは、私にも分かりかねるな」

「ケットシーって、なんか意味不明なところあるよね。デブモーグ
リのチャックの中も気になる。」

「確かに。何か入ってるんだろうか?マテリアならどうする?」

「マテリアだったら・・・、大量に入ってるよね!デブモーグリ持
ち帰るよ!絶対!」

「やはり、そう来るか」

「うーん、でもマテリアじゃない気がする。ヒトか、異次元空間と
かかなあ。案外。」

「それはそれで、不気味だな」

「ねえ、誕生日プレゼント何がいい?」

「いや、特に何か欲しいものがある訳でも・・・」

「えー、つまんないよー。誕生日プレゼント選ぶのが楽しいんじゃ
ん。」

「しかし、思いつかない・・・」

「欲がないんだね。アタシなんてマテリアでしょ、お金でしょ、イ
ケメン金持ち彼氏でしょ、アタシだけの城にアタシだけの亀道
楽!」

「ユフィが強欲すぎるのだ。」

「そうかなあ。これくらい普通。じゃあクリスマスプレゼントと同
じでいい?」

「・・・。彼氏が欲しい女性が、彼氏でもない男にそんなものをあ
げてはいけないし、一緒に寝るのはどうなのか?」

「アンタは、条件に当てはまってるよ。」

「金持ちではないのだが?」

「イケメンだからいいよ」

「私をキープしようとしているな」

「ヘヘッバレた?この先いい出会いなかったら、考えとくね。」

そんな事を言いながらも、ユフィは私に抱きついてきた。

「ねぇ、この前みたいに髪を撫でて」

さっきまで友達感覚で会話していたのに、急に彼女になったかのよ
うに甘えてくる。

「フッ・・・。彼女でない女性を撫でている時点で私もどうなのだ
ろうか・・・」

「大丈夫だよ。アタシ落ち着くんだ。」

「そうか、実は私も落ち着く。」

「利害が一致してていいじゃん」

こうして、私は今日もユフィと眠る。

翌朝、目覚めるとユフィは朝早く出掛けた。ティファとエアリスも
いなかった。

クラウド、バレット、シドは宿の一室を誕生日会が開けるようにセ
ッティングをはじめていた。

ケットシーがやってきて、今日は夜まで皆さん忙しいみたいですか
ら、私とナナキさんで散歩でもせえへん?

街の外をぶらぶらと散歩をし、夕方までを過ごす。途中で真っ赤に
揺れるカーネーションが咲いていた。まるで真っ赤な情熱を明るさ
を元気をもったユフィのようだった。

町に戻ると、ユフィが待っていた。ユフィに連れられクラウドの部
屋に入る。

「「お誕生日おめでとう!」」

みんなの掛け声と共に乾いたクラッカーの音が次々と鳴らされる。
テーブルにはケーキとお酒が並ぶ。

「こ、これは?」

「アタシたち3人で用意したんだ。ティファがね誕生酒を用意した
んだ。」

「これはね、ミスティネールって言うの信じられないけど、自由な
人って意味なの。」

「いやー、三十年も寝てたんだ。自由すぎるだろー」

「アタシもそう思う!」

バレットの突っ込みに同調するユフィ。

「ケーキはエアリスが用意したんだろ」

「そうよー。ケーキ屋さんでね。秋だからサツマイモと栗のモンブ
ランケーキよ」

クラウドに聞かれてエアリスが答える。

「おお、俺モンブラン好きだぜーー」

「オイラもーー」

「ナナキさん、ヨダレが垂れてまっせ」

シドもナナキもケーキを美味しそうに眺める。そして、ケットシー
が突っ込む。

「じゃあ、乾杯しましょう!」

こうして、その日は朝まで酒を飲み交わす。シドやバレットは理由
なんてなんでもよくて、滝のように酒を浴びる。エアリスとティフ
ァもスイーツに話も弾みをしながら、クラウドにお酌したり、ナナ
キのお口をふいてあげたり。

ケットシーはその様子をウンウンと頷きながら眺めて幸せそうだっ
た。

「みんな、やりたい放題だね。でも、いいよね。こういうの。みん
なの誕生日の度に出来たらな。」

「確かに。その為にも星を救わないとな。」

「その前に!約一ヶ月後の11月20日はお祝いしてよね」

「いや、星を救うのが先だな」

「もう、真面目なんだから!てか、わざと言ってるでしょ」

「フッ・・・、わかるか」

「わかるよー。あ、これ誕生日プレゼント」

ユフィは小さなピンクのリボンで結ばれた袋を差し出す。私は受け
取ると中身を開いた。ユフィの服と同じ緑色の紐のついたモーグリ
の携帯ストラップだった。

「これは?」

「迷ったんだけどね、ヴィンセントだけ携帯にストラップ何もつけてないでしょう?雑貨屋さんで売ってたんだ。かわいいし色もいいから。」

「ありがとう」

ユフィは早速、私の携帯にストラップをつけてくれた。

会がお開きになると、ユフィは私の部屋にまたやってきた。
急いで来たのか、髪がまだ半乾きで雫が垂れている。
しかもパジャマもかなりラフな羽織り方をしている。

「ヴィンセント?今日遅くなっちゃったから、寝ちゃったらどうしようと思って急いで来た。」

「慌てなくていいぞ。ユフィ。そんな格好では男に襲われても文句言えないな。」

「だってー、もう一個のプレゼント渡したかったんだもん」

「なんだ?まだプレゼントがあるのか?」

「うん。目を閉じて。」

「なぜ?」

「いいから、いいから」

いつもユフィのワガママには押し切られてしまう。いや、抵抗する気はあまり起きない。なんだかんだでヴィンセントは素直に応じる。

ユフィは素直に応じて目を閉じたまま目の前に立っているヴィンセントに背伸びをしてヴィンセントの唇に己のそれを重ねた。

「・・・・。これが、プレゼントか?」

「・・・うん。」

愛らしく頬を紅色に染めながらコクンとユフィは、うつむきながら頷いた。

「ユフィ・・・」

私はユフィのことが愛おしくて堪らなかった。胸の奥に熱いものが込み上げてきた。本当の意味でユフィを抱きたいと思った。しかし、ユフィの将来のことを思うと、素直に抱くことはできなかった。代わりに何度も何度も腕が痺れるくらい私はユフィの髪を撫でた。

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