本編編
□冷血漢の恋
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そしてユフィとヴィンセントがいないうちにシドが仲間入りし、タイニーブロンコも手に入れていたようだ。
2人にシドの紹介が終わるとすかさずシドは
「なーんだ、色気のねぇガキと男かー。」
とユフィにガッカリした様子。
「もっとキレイな姉ちゃんと旅したいぜ。ティファが1番好みだな。」
そう言ってティファの胸をじぃっと見る。
「うわー、おっさんキモイわ!」
パーティーは翌日、タイニーブロンコに乗った。その中でユフィはぼやく。
「まさか、ケットシーの言う運命の紳士ってアレじゃないだろーな?」
「あー、あれは明らかにちゃいますわ。」
「だよねー。あんなオッサン絶対無理!」
「おー、心配しなくてもお前みたいなガキにゃー興味ないよ。」
ユフィはその男にもタメ口を聞いてはいた。思えば、クラウドやバレットにも。言いたいことは言う。
ティファやエアリスには多少気を使っているようだが…
そしてウータイでの騒動が起きた。
「ユフィの様子がおかしい。いつもと違う…」
クラウドもエアリスもことの事態を飲み込めてはいなかった。ユフィはこの辺は詳しいからと、自ら案内を勝手出た。
しかし、神羅兵がやって来てからユフィは慌てて1人で去ってしまった。
私たちのマテリアをすべて抜き取って。
バレットもティファも怒っていた。
当たり前だった。なのに何故か妙に私の心はざわついた。
エアリスはそれに気づいたようだった。
「いつもと違う…って。あなたにしては意外なセリフね。」
私はそれには答えなかった。
「とにかく北に向かおう…」
と、言ってユフィを探すことにした。
ユフィの家でユフィを見つけたが、あっさり逃げられてしまう。
ダチャオ像の方に逃げたので追って行ったが、次に目に見えたのは逆さまに吊されたユフィだった。
何故かタークスのイリーナまでもが巻き込まれていた。そして、その2人を捕まえたのは醜い男、コルネオ。
「ユフィ!」
「たーすけてー。」
コルネオのことはタークスのレノ達、クラウドたちに任せて、ユフィの縄を解いてやる。
「ヴィンセントー?助けてくれたの?うわーんん。ごめん。」
泣きじゃくる少女をすぐさま抱きしめた。
「一体これは…?」
ユフィは私の胸に顔をうずめながら、
ウータイのことを話してくれた。
胸が締め付けられた。私が眠っていた間の事ではあるが、神羅がウータイを攻撃、戦争と化したのだと言う。
私にも責任はあるのだ…。
故郷繁栄を想って、彼女なりに考えついたことを実行したようだ。
「ユフィ、みんなにもちゃんと説明するんだぞ。」そう言ってユフィから離れた。
「ヴィンセント…。ありがとう。」
「あらあら、お熱いわねー。」
エアリスが遠くから一部始終を見てたので冷やかす。
「ちがわい!」
ユフィは少しだけ恥ずかしそうだったが、いつものユフィの話し方に戻っていた。
マテリアを全て返し、ユフィは説明をしたが、クラウドたちはユフィを置いてサッサとウータイを去ろうとした。
ユフィはクラウドたちに着いて行きたかったが、その状況にユフィは戸惑った。
「あ、あの…。」
「フッ…。勝手についてくるがいい…。」
しかし、ヴィンセントがそう言ってくれたので
「じゃ、勝手についてくからー。よろしく!」
そう言って着いてくことになったのだ。
コレルに向かう途中の宿でヴィンセントはユフィに尋ねた。
「ユフィ、悪態をついたり気を遣ったりしたのは、わざとか?私からマテリアを騙し取るためだったのか?」
「それは違うよ。」
いつもの様にバカだの言われるかと思っていたが、冷静に答えるだけだったので拍子抜けした。
ますます不可解な娘だ。
そう思って部屋に戻ろうと廊下を歩くと向かいの部屋でバレットとシドが話している。
「あのガキ油断ならねえな。」
「まったくだ。結局のこのこ着いてきてるし。」
「あー、油断も隙もねえ」
床で丸まるナナキは
「でもー、悪い人じゃないよ。僕のシャワーもしてくれるよ。毛をトリミングしてくれるし。
それにバレットの娘さんのマリンちゃんにって名産のお菓子とかよく買ってくるよね。
シドだって。タバコ買えるとことか教えてくれるじゃん。口は悪いけど。
町に行くとよく見てるよね。
それに、ウータイもいろいろあったのは僕もじっちゃんから聞いてる。
あとはさ、クラウドが暗くなってる時には、わざとからかったりしてる。」
確かに悪ではない。ナナキの言うとおり、あの子なりの考えがあったのは確かだ。ナナキは続けた。
「あのヴィンセントが、勝手に着いて来いって言ってたね。ヴィンセントもきっとユフィの良さわかってるね。」
確かにあの時、迷った顔したユフィに思わず声をかけてしまったが、私は余計なことをしてしまったようだな。
「あの子意外とチャーミングですわ。
占ってって言ってくるんですわ。で、金運 と恋愛運気にしてますよ。」
ひょいと、ケットシーがバレットの後ろから顔を出した。
シドとバレットは大笑いだった。
「あのガキが恋愛運?グハハハ」
「ガハハハ。あれは貰い手ないわ。マリンがあんなんじゃなくて、よかったわー。」
酷い言われようだな。これでも仲間と思ってるんだろうか。あの少女は。
あの時、ゴドー殿を説得してユフィには旅を止めるようするべきだった。
今度は廊下の向こう側からパタパタ歩く音がして、ティファとエアリスがやって来た。
「あら、ヴィンセント!
ウータイでは大変だったわね。
それにしても、ヴィンセントはよく気づいたわね。ユフィがおかしいこと。それだけ、よく見てるのね。」
「何をいってるのだ?エアリスもその様なことを言うのはおかしいぞ。」
「あのね、ユフィはね。宿で寝る前にあなたの事よく話してくれるの。」
ティファも話し始めた。
「そうよー。本人は今日こんなことがあってねー。って学校であったこと話してくれる感覚なの。」
「ウータイで助けてくれたヴィンセントが、かっこ良かったって。アプス倒したのはクラウドなのに!」
やはり、そうか。ユフィは私の事を好きなのかもしれない…。まさか11歳も年下の少女がこんな薄汚れた男を?
それでいい筈がない。
悶々と考え込みながら、風にあたるため。ヴィンセントは宿の外へ出た。するとクラウドとユフィが木陰に座り話し込んで居るのが見えた。ヴィンセントは気づかれないよう影に隠れて二人の会話を聴き始めた。
「ねえ、クラウド乗り物酔いの薬持ってるよね。それちょうだい?」
そのユフィはいつもヴィンセントに話しかける時とは違い、穏やかな表情だった。話し方も可愛いらしさのある16歳の女の子のそれだった。
「もちろん。お前も乗り物弱いんだな。わかるよ。わかる。」
「わかってくれるのクラウドだけだー」
そう言ってユフィは馴れ馴れしくクラウドに抱きつく。クラウドはまんざらでもなさそうだ。
まったくあの娘は…、年頃の娘が馴れ馴れしく男に抱きついたり無防備すぎる。ヴィンセントはユフィの無防備さに苛立った。
しかし一方で、やはり私の事など好きではなかったのだと安堵していた。とんだ思い過ごしをしてしまったようだと。
そのような事を考えてしまうこと自体、私も間違っている。私は過去の罪を背負うことだけ考えればよいのだ。私には人間として生きる資格はないのだから。
「おい。やめろよ。」
クラウドは恥ずかしそうに、答える。
「いいじゃん。乗り物酔い仲間のハグだよ。ハグ。」
ユフィは軽い感じで言うと、クラウドが周りを気にして部屋を戻ろうとした。
「ユフィ。そろそろ寝ないと寝坊するぞ。寝坊したら置いてくから」
「わかった。わかった。ねるよー。」
そう言って二人は去っていった。
そしてヴィンセントも風に当たってから部屋に戻っていった。