本編編
□少女マンガの恋
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その日は、元々遅くなったのでクラウドは村に宿を取っていた。部屋割りはクラウド、バレット、ケットシーで一部屋とティファ、エアリス、ユフィで一部屋だった。そこで、ソファーで寝ていたナナキも泊まれるよう、ヴィンセントとナナキで部屋を取った。
ちょっと雰囲気を良くしようよ!と、エアリスの提案でクラウド、バレット、ケットシー、ティファは部屋呑みをはじめた。
ナナキは余りにも疲れていたので、1人、宿屋のロビーのソファーで眠ってしまった。
そして、ヴィンセントは独り宿屋の外で風に吹かれ天を見つめていた。
「ルクレツィア…。」
そして、クラウドがヴィンセントに用意してくれた、部屋に向かう。すると廊下でユフィにすれ違う。
「あ!ヴィンセント!」
「なんだ?」
「ねえ、アンタの服カビてるよ!
汗はかかなくっても、洋服はカビるんだよ。シャツ用意しといたから使って。うちのオヤジみたい(笑)」
「何故だ?なぜここまでする?」
「これくらい普通。
だって仲間じゃない?
それに隣にカビ臭い奴居たら、戦闘しづらいでしょ?」
「仲間?私をそのように慕うことは己を傷つけることになる。」
「どういう意味?わかんなーい。
死に損ないゾンビみたいな顔色しちゃってさー。」
「お前のような小娘にはわからん。」
「そうだよー。16歳だもーん。大人じゃないも〜ん。プイ」
ユフィはそのまま部屋に戻る。
ヴィンセントはクラウドたちの集まる部屋に一度顔を出して、クラウドに伝えた。
「クラウド、あの女の子とは、なるべくパーティーは別にしてくれないか?」
「えー、それは困るなー。ユフィ使えるんだよ。後方からでも攻撃力落ちないしー」
(私は失敗したのだろうか?このパーティーに着いて来た事。)
そして、ヴィンセントも自身の部屋へ。バスルームにはバスローブが掛けられていた。ユフィが用意したのだろうか?柔軟剤のような匂いが付いていた。
シャワーを浴び、ミニバーのワインを飲んでからベッドの中へ。
実に30年ぶりのベッドだった。
最後にベッドに眠ったのはいつの事だったか。忘れて居たな。ベッドが温かいことなど…
そんな事を思い、うとうとしていると夢を見ているようだった。
目の前にかつて愛した女性、眠るルクレツィアが居た。
ルクレツィア…
なぜ?
ヴィンセントは疑問にも思ったが、これは夢だろう。夢ならばもう少しだけと、ルクレツィアを見つめた。
やはり、ルクレツィアは美しい。ヴィンセントはルクレツィアに見とれ強く抱きしめた。その女性の滑らかな素肌と体温を感じた。そして柔らかな唇に口づけをした。余りにも柔らかくプルプルした唇が気持ちよく感じていた。
ルクレツィア君をこうして抱きしめたかった…。
その時、夢から目が覚めた。目の前のルクレツィアも目を覚ました。そして目が合う。
現実に戻ったヴィンセントは愕然とした。よく見ると、目の前に居たのは、最愛の人、ルクレツィアではなかった。
その人はユフィだったのだ。ユフィがヴィンセントのベッドの中で寝ていたのだった。
ヴィンセントはユフィとルクレツィアを見間違えたこと、16歳のユフィを抱きしめたこと、キスしたことに深く罪悪感を感じ動揺した。
「……。ん?ヴィンセント⁉」
目覚めたユフィが慌てて唇を抑えて驚く。そして自身が裸である事に気がついて更に驚く。
「な、何してるの?」
「あ、いや、その、すまない。私は、部屋を間違えたようだな…」
バツが悪そうに謝るとヴィンセントうつむいた。ヴィンセントが答えられないでいると、ユフィは言った。
「今キスしたよね?」
「す、すまない。間違えて」
「間違い?って何それ!
アタシのファーストキス…。
それに、そのバスローブあたしの。
ここ、アタシたちの部屋…」
16歳の少女にとってのファーストキスを奪ってしまったことに、殊更罪悪感を感じてしまった。
ユフィの言葉に愕然として、ヴィンセントはひたすら謝るしかなかった。
「す、すまなかった。忘れてくれ…」
ヴィンセントは謝るとそそくさと出て行ってしまった。
ユフィはその夜はそのまま動けなかった。