小説

□Summer vacation!
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暑いから、海行こうぜ。
そう言い出したのは城之内だった。
昼飯である焼きそばパンをかじりながら思い付いたように言うもんだから、杏子には最初もごもごふがふがにしか聞こえなかったが、同席していた皆も同じだったらしい。一様に頭にクエスチョンマークを浮かべて城之内に注目していたが、彼の口にはまだ焼きそばパンが残っていた。
すぐさま本田に翻訳を頼んだがうまくいかなくて、結局口の中のものを全て飲み込んだ城之内に再度発言を求めた事で得られたのが、先程の突拍子もない案だった。

「夏休みだろ!夏といったら海だろ!」

いきなりまたなんで、と思ったが、城之内の発言でそういえばもうすぐ夏休みなのだということを思い出す。
普段からバイト三昧な生活を送っている城之内でも、遊びたい気持ちは一緒で、むしろ、城之内だからこそ遊びたいという気持ちが人一倍強いのだろう。折角の長期休暇なのだし、少しくらい羽根をのばしてもバチはあたんねぇ。そんなトコだろうなと思った。

「でも、バイトは大丈夫なの?」

最初に城之内の身を案じたのは遊戯だ。
当然の質問だと言える。城之内といえば、長期休みといえばバイトの鬼!になる勤労学生である。それこそ休みなんかないんじゃないかと思わせるような働きぶりを見ていたら、そんな台詞が出てくるのも頷けた。現に、杏子も遊戯と同じことを聞こうと思っていたのだ。

「ヘーキヘーキ。まだシフト出てないし、一日くらいなんとかなるから」

対する城之内は気楽なものだった。
バイトで生活がかかってくる彼を遊びに連れていくのは気が引けるが、まぁ、城之内がいいというからにはいいのだろう。何より彼が言い出したことなのだから、無理なんかしていないのだろうし、無駄な遠慮をしたら怒り出しそうだ。

「で、行くの?行かねーの?」

答えを求める城之内に、遊戯は頷いた。
杏子にも断る理由がない。続いて本田と獏良も了解する。
御伽は、夏休み丸々使ってアメリカに行ってくるのだといって断っていた。なんだよ、とぶうたれた城之内だが、なんとなく理由はわかっているのだろう。それ以上の追求はしなかった。彼はただの学生である杏子や城之内とは違って、少し特殊な学生だということだ。
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