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□恋しています[恋次]
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俺の最近の日課は、早起きして隊舎の庭先で鍛錬すること。
周りの奴らからは珍しいだの、何か魂胆があるだの言ってくるが俺は気にしねぇ。清々しい朝は二日酔いも忘れさせてくれるし、何たって眠気も吹き飛ばすからな。


「恋次さん、おはようございます」


「おう!!」


通りすぎる隊員たちに挨拶をしてまた鍛錬に勤しむ。やっぱ天気のいい朝は気分が違うぜ。軽くストレッチをして竹刀を構えると


『阿散井副隊長、おはようございます。』


「おっ///…おうっ!!」


可愛らしい声、ふわっと香る甘い匂い。ぱっちりとした目で見つめられた俺は、不覚にも上ずった声で返事をしてしまった。


『今日も鍛錬お疲れさまです。良かったらこれ使ってください。』


ニコッと笑いながら俺に手拭いを渡した、六番隊八席の西園寺菜桜。
俺とはクラスが違ったが同期で、すげーしっかりしていて人気があって…狙ってる奴が結構いるんだよな。実は俺もその一人。同じ六番隊にいながら仲良くなるきっかけを探してはいるんだが…なかなか二人っきりになる機会がねぇし。
そこで考えたのが朝鍛錬してたら
偶然出会うんじゃねぇかって早速実践してみたら…案外上手くいくもんだ。
しかもすげぇ自然だろ?執務室に呼べば二人きりなんて簡単かもしれないが、それじゃ仲良くはなれねぇ気がすんだよな。
最近じゃ西園寺がここを通る時間を狙って鍛錬してたら、毎日こうやって二人で話す機会が増えてきた。鍛錬も出来て一石二鳥ってやつだ。
…俺の魂胆が見えてきたって思ってるだろう…とにかく俺としはもっと親しくなりてぇ。他の奴らと同じ扱いはゴメンだからな。


『…阿散井副隊長?』


「!!!」


俺が渡された手拭いを取らなかったから…いや、つい考えてる事が顔に出たからか?西園寺が怪訝な顔をして見ていた。


「い…いや///…悪りぃ。ちょっと考え事してた。手拭いありがとな。」


『…いいえ。』


心配そうな西園寺に向かってはにかんだ笑顔を向けると、


『それでは阿散井副隊長、私は先に行きますね。』


そう言ってふわっとした笑顔で会釈をして隊舎へと走って行った。そんな姿を俺はきっとだらしない顔をして見送っていたんだろうな。
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