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□大切なもの[恋次]
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私…ずっとこのままでいいのかな…。
私は九番隊三席、西園寺菜桜。自室の縁側でボーっとしながら彼氏である阿散井恋次を待っていた。
『遅いなぁ〜今日は朝から一緒に出掛けようって言ったのに…もうお昼過ぎだよ。連絡しても繋がらないし、どうしよう。』
ハァ〜と大きなため息を付けば過去の出来事が頭を過った。
ドタキャンしたと思えばルキアと一緒にいるし、恋次は女の子と親しげに話してるのに私には男と話すななんて言うし、機嫌が悪いと1日中口聞いてくれないし…私って恋次にとって都合のいい女、なのかな…。
『何か私って、バカみたい…。』
乱菊さんのとこでも行こうかな…。って考えて自室を出ると後ろから声をかけられた。
「菜桜か?阿散井と一緒じゃないのか?」
『…檜佐木副隊長』
たまたま休憩に行くという修兵に会った。菜桜の不機嫌な顔を見て何かを悟ったのか
「今から飯食いに行こうかと思ったんだが、一緒に食いに行くか?」
と誘ってくれた。
今日の出来事や、最近の恋次の行動など、修兵に自分の思いをぶつけた。それをじっと聞いていた修兵は重い口を開いた。
「なぁ…、菜桜…お前ホントに幸せか?」
その一言が胸に突き刺さった。私は恋次の為ならって我慢してきた。我慢?それって恋次の為?ホントに私、幸せなの?心の中で自問自答を繰り返してると
「ちゃんと自分の気持ちに正直になれ。相談だったらいつでも乗る。」
そっと肩を叩き立ち上がった。
『ありがとうございます。あの、ごちそうさまでした。』
お礼を言うと「気にすんな」と笑ってくれた。そして修兵と一緒に食堂を出ると
「俺は仕事に戻るが…あんまり思い詰めんなよ。」
そう励ましてくれた。私が自室に帰るとそこには恋次がいた。
「何だよ…。約束破って檜佐木さんと逢引か?」
『違う!!そんなんじゃない。連絡しても繋がんないから乱菊さんのとこに行こうと思って…』
「へぇ〜、乱菊さんとこ行こうとしてる奴が何で檜佐木さんと一緒なんだよ。」
『途中で会って、今からお昼休憩入るから一緒にどうだって誘われただけだよ!!』
「お前は誘われたら誰にでも着いてくのか?」
『何言ってんの?檜佐木副隊長はただの上司だよ?』
「そんじゃ上司だったら誰でも着いて行くのかよ!!」
恋次が大声で怒鳴り始めた。
『酷いよ…。自分だって私の約束ドタキャンしてまでルキアと一緒にいた時だってあるじゃない?』
「ハァ!?それいつの話だよ?ドタキャンしたのは悪りぃと思ってるけど、たまたまルキアと会ったから飯食い行っただけだろ?ちゃんと説明してお前だって納得したじゃねぇか!!」
『それじゃ、今回の私と同じじゃない。たまたまルキアと会ったからご飯食べに行ったんでしょ?私だってたまたま檜佐木副隊長と会ったからご飯食べに行ったんだよ?』
「お前って…ホント面倒くせぇ女なんだな…。」
『…そう思うなら…別れた方がいいんじゃない?』
菜桜はずっと…ずっと思っていた事を恋次にぶつけた。
「……それがお前の本心なんだな。」
静かに口を開き低い声で呟いた。
『一度距離を置こう?お互い離れてそれからこの先どうしたいか考えたいの。でも…もし離れた方がいいと思ったら、このまま…』
「…好きにしろよ。」
菜桜が言い終わる前に恋次はそう捨て台詞を言うと、こちらを見る訳でもなく瞬歩で菜桜の前から消えた。
『これで…いいんだよね。』
一人取り残された部屋で菜桜はぐっと涙をこらえた。