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□私の夢物語[修兵]
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私がずっと憧れていた死神…。流魂街にいた時から少し霊力があり、もしかして死神になれるんじゃないかと言われ、真央霊術院に入学した。
私を一言で表すとメガネにおさげ、地味な性格の三拍子。正直死神なんて務まるのかと思っていたが無事卒業する事が出来た。
卒業後は六番隊に所属する事になり職務を全うした。私は目立たない存在で、これと言って何も活躍のないまま九番隊に移隊する事になった。
私の他にも、他隊から数名九番隊に移隊してきた。その数名の中でも私は特に目立たない存在。皆がワイワイ騒いでいても、私は少し離れたところから見ているだけで、たまに話かけられても会話が続かない。だから…誰も私に話かけて来ないんだ。
でも今までずっとこんな性格だから、全然苦ではない。…と言い聞かせてるだけ。本音を言えばもっと近づきたいし話したい。私の想い人…檜佐木副隊長と…。
移隊して数ヵ月がたった。私の担当は瀞霊廷通信の編集担当。締め切り間近になると忙しいけど、仕事に没頭出来て私にはピッタリの仕事だ。たまに檜佐木副隊長と一緒に仕事をするが、私との接点は…無いに等しい。何故って…
「悪いが…誰か至急原稿取りに行ってくれないか?」
檜佐木副隊長が言えば、我先にと女性隊員達が挙手するのだ。私にはそんな勇気はない。
「じゃ、笹城が三番隊、美都が十番隊に行ってくれ。」
「はい///。では檜佐木副隊長行ってきま〜す。」
「おぅ!!頼んだぞ。」
「は〜い///」
指名された女性隊員は、檜佐木副隊長に手を振って出て行った。それを私はじっと見つめる事しか出来ない。
だけど、こんな私でも檜佐木副隊長と話をするチャンスが巡って来たのだ。いつもの様に檜佐木副隊長は編集室に顔を出した。
「誰か手ぇ空いてる奴いねぇか?」
檜佐木副隊長の声に、周りを見るが皆大量の原稿を抱えて困惑していた。すると急に私と目が合った。
「んじゃ…えっと…」
『あ、あの…西園寺…です。』
私がボソッと呟くと、檜佐木副隊長はすまなそうな顔をした。すると、女性隊員の一人が檜佐木副隊長に近づき視線を私に向け
「西園寺さんっていっつも暗いから、檜佐木副隊長も名前覚えていないんですよね?」
クスクス笑いながら話した。その隊員の一言に私は何も言い返せなく俯く事しか出来なかった。ホントにこの人の言う通りだ。すると檜佐木副隊長は私の頭にポンと手を乗せ
「俺が悪いんだ。部下の名前ちゃんと覚えてなくて…。副隊長失格だな」
『そんな事ないです!!檜佐木副隊長は…隊長のお仕事もなさって大変なんですから…。私は全然気にしていませんから!!』
私は檜佐木副隊長に必死に伝えた。そんな私の様子を見てフッと笑い
「ありがとな。…んじゃこれ、六番隊に届けてくれ。それから、ついでに阿散井の取材も頼む。」
そう言って私に配達する書類と、阿散井副隊長のインタビューの原稿を私に渡した。
『わかりました。』
私は書類と原稿を受け取り檜佐木副隊長に背を向けると
「西園寺!!」
急に呼ばれた。そして優しい笑顔で
「よろしく頼むな。」
私に微笑んでくれた。私はその笑顔にドキッとしたが、あまりの恥ずかしさにぺこっと頭を下げ隊舎を後にした。
普通の女の子だったら、きっと笑顔で「行ってきます」と言うんだろうな…。そんな事を思いながら私は阿散井副隊長がいる六番隊へ向かった。
元六番隊という事もあって、私は隊員の皆に挨拶をして、執務室へ向かった。
『九番隊西園寺です。』
「入れ」
『失礼します…。朽木隊長書類お持ちしました。』
朽木隊長に書類を手渡すと受け取った書類に目を通し始めた。阿散井副隊長は…私は執務室を見渡した。どうやら席を外している様だ。私は朽木隊長に一礼して背を向けると、
「西園寺。九番隊は慣れたか?」
『は、はい!!今は瀞霊廷通信の担当で、とてもやりがいのある仕事をさせて頂いてます。』
急に朽木隊長に話かけられ、私は慌てて背筋を伸ばした。
「そうか…。九番隊でも隊務に励むがよい」
『はい!!ご期待に添えますよう、精進して参ります。』
朽木隊長は私の言葉に少し微笑んだ…様な気がした。こんな私の事を気にかけて下さって…私もつい笑顔になった。その時、急にドアが開き阿散井副隊長が戻って来た。
「隊長!!戻りました!!」
ドタバタと執務室に入るや否や、私の顔を見て
「おぉ!!西園寺じゃねぇか!!久しぶりだな。九番隊だったよな?どうだ?檜佐木さんと上手くやってるか?」
阿散井副隊長から、いきなり質問攻めにあってしまった。私が何て答えようか考えていると
「恋次…騒がしいぞ。」
朽木隊長が阿散井副隊長を睨んだ。
『あ、あの!!朽木隊長!!もしもお時間頂けるなら、阿散井副隊長に取材したいのですが…』
恐る恐る朽木隊長に伝えると
「それならしかたあるまい。それから恋次、書類は今日中に提出だという事を忘れるな。」
「………はい。んじゃ西園寺取材は別の場所でするか。」
『はい。それでは朽木隊長、失礼します。』
私は朽木隊長に一礼し、阿散井副隊長と執務室を出た。隊舎を後にし連れられてこられたのは餡蜜屋だった。阿散井副隊長はおごりだと言って部屋の一室に入りそこで取材をする事になった。
『忙しいのにお時間取らせて、しかもごちそうになってすみません。』
「あ?気にすんなって。俺もちょうど休憩したかったんだよ。」
阿散井副隊長はきっと私に気を使ってくれたんだと思った。私は手短に取材をしようと急いで原稿を取り出した。
「ところでよ…檜佐木さんとこではちゃんと馴染んでんのか?」
『え?』
私が顔を上げると、少し心配そうな顔で
「お前…人見知りだろ?六番隊でも、皆と馴染むのに結構時間がかかったみてぇだからよ。」
その言葉が嬉しかった。きっと私の事なんて誰も気にしていないと思っていたから。私は阿散井副隊長に心配かけたくないと笑顔で答えた。
『上手く、やっています。瀞霊廷通信の仕事、私向いてると思うんです。六番隊ももちろん楽しかったです。皆さんとてもいい人ばかりでしたし…。』
「そっか…。ならいいんだけどよ。何かあったら檜佐木さんに頼れよな。もちろん俺に頼ってもいいんだぜ?」
ニッと笑った阿散井副隊長に思わず私も笑った。
「西園寺、そうやって笑ってろよ。お前…笑ってた方が、その…いいと思うぞ。」
ちょっと顔を赤らめて私に言った言葉に、私も顔が赤くなるのを感じた。
『あ、ありがとうございます。…あの!!…そろそろ取材しないと…』
私は恥ずかしいのを誤魔化すために原稿を取り取材を始めた。