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□幸せの形[恋次VS一護]
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『おじさ〜ん。餡蜜一つ…あっ、それから白玉せんざいもね〜』


「何だよ。結構食べる気満々だな…。」


俺がため息交じりで言うと


『あたりまえでしょ?だって恋次のおごりだよ?折角だから食べなきゃ…ね?ルキア?』


「そうだな。菜桜好きなもの頼むがいいぞ。」


「お前らなぁ…」


ルキアの一言でメニューを嬉しそうに見た菜桜を、ルキアがじっと見ていた。


『ルキア?どうしたの?』


あまりにもじっと見つめられ、菜桜がルキアを不思議そうな顔で見た。


「いや……何だか、菜桜随分会わないうちに雰囲気が変わったなと思ってな…。もしかして、付き合ってる人がいるのか?」


俺だけじゃねぇんだ…。そう思っていると


『や、やだな…別に何も変わってないよ?それに、付き合ってる人どころか好きな人さえいないんだよ?ねっ、恋次?』


「あ、…まぁ…そう、だな…。」


俺は急に話を振られ、適当に相槌を打った。


「そうか…恋次が言うなら、私の気のせいかもしれぬな。」


ルキアは何事も無かった様に菜桜と話に花を咲かせていた。
だけど俺は、さっきの菜桜の態度に疑問を持った。何か隠してるみてぇだ。仮に何か隠し事をしていても俺がどうこう言える立場じゃねぇが。…俺たちには隠し事なんかしないで欲しいと思うばかりだ。結局俺は菜桜の態度が気になって殆ど話して聞いていなかった。


「菜桜、恋次、私はそろそろ戻らぬといけぬ。」


『あっ!!そうか…ルキアまた今度一緒に出掛けようね。』


「ルキア、たまには俺も誘えよ。」


「あぁ…では、またな」


ルキアと別れ、俺と菜桜は来た道を戻っていた。俺は二人きりになったとこで先ほどの話を菜桜にした。


「なぁ…菜桜。ルキアがさっき、お前の事雰囲気が変わったって言ってたけどよ…俺も…」


『わぁ!!大変〜!!そろそろ急いで戻らないと!!恋次、今日はごちそうさま。また今度ゆっくり話そうね!!じゃ〜先行くね!!』


「菜桜!!、ちょっと待てよ!!」


俺が話している途中で菜桜が走り去っていった。明らかに何か隠してる。俺たちに言えない事…一体何なんだ?


あれから朽木隊長に説教され、俺は缶詰状態で執務をこなした。
流魂街でも虚の出現が多く、俺も虚討伐に駆り出され、菜桜の事も忘れかけていた。


そんなある日、俺は檜佐木さんと飲みに出かけた。
ふと個室を見るとそこには京楽隊長が飲んでいた。俺たちに気づき一緒に飲もうと誘われた。隊長の誘いだ。断る理由もねぇし、俺と檜佐木さんは京楽隊長と飲むことになった。


「京楽隊長、お邪魔してすみません。」


檜佐木さんが頭を下げると


「別に気にする事ないさ…ほら、阿散井君も入りなよ」


京楽隊長に促され、俺も檜佐木さんに続いて個室に入った。


「それじゃ、邪魔します」


俺は京楽隊長の向かえ側に座った。杯を酌み交わし、自隊の話をした時だった。京楽隊長が何かを思い出した様に俺に話した。


「そういえば、阿散井君。うちの菜桜ちゃんとは同級生なんだって?」


「はい…。ルキアとクラスが一緒でルキアから初めて友達が出来たと紹介されたんッスよ。」


「へぇ〜そうなの〜。最近菜桜ちゃん、何だか綺麗になったね〜。前と雰囲気が違うって言うかね〜。」


「そうッスよね!!」


俺は思いっきりテーブルに手を付き、京楽隊長に詰め寄った。


「阿散井君?」


「あ…すんません…。」


俺は座りなおすと杯に視線を落とした。


「どうしたんだ?阿散井。何かあったのか?」


檜佐木さんに言われ、俺は決心した。


「京楽隊長。俺も最近菜桜が少し会わないうちに雰囲気が変わった…つうか…大人っぽくなった…つうか……ルキアも同じ事言ってたんッスよ。
あいつは何もねぇって言ってたんスけど…俺たちに、何か隠し事してる様な気がして…
京楽隊長は何か聞いてないッスか?」


「何か…ねぇ〜」


俺がじっと見つめると、京楽隊長は杯を空け目を細めた。


「それって…大人の女性になったんじゃないのかな〜」


「大人…ッスか?」


俺が聞き返すと、今度は檜佐木さんが酒を注ぎながら答えた。


「要するに、男が出来て、やる事やっちまったんじゃねぇかって事だよ。」


「あいつはそんな事する訳ねぇ!!」


俺は怒りに任せて檜佐木さんの胸ぐらを掴んだ。


「阿散井君!!こんなとこで霊圧上げちゃダメだよ〜」


「!!!……すんません…。」


俺はハッとして檜佐木さんから手を放した。


「ま〜本人から聞いた訳じゃないから、ホントの事はわからないよ〜。そんなに気になるなら直接聞いてみればいいんじゃないのかい?
でもね〜いくら阿散井君が菜桜ちゃんとお友達でも、菜桜ちゃんだって人に言いたくない事ってあるんじゃないかな?
それとも、阿散井君はどうしても聞きたい理由でもあるのかい?」


「そ…それは…」


答えに詰まってしまった。確かに菜桜の事は親友だ。それ以上の感情があるのかと言えば…正直自分でもわかんねぇ。友達として好きなのか、それとも女として好きなのか。
何も答えない俺を見て、京楽隊長はボソッと呟いた。


「そういえば、最近任務で現世に二週間行ってたな〜。」


そう言うと何事も無かった様に酒を飲み始めた。


「京楽隊長…ごちそうさまです。檜佐木さんすんません。俺、先に帰るんで…」


急に立ち上がった俺を見て、檜佐木さんがフッと笑って言った。


「阿散井…今度おごれよな。」


「…ウッス」


俺は京楽隊長と檜佐木さんに頭を下げ、居酒屋を後にした。
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