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□[長編] secret 1 〜修兵編〜
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「今日から俺たち九番隊に3か月赴任する夜神だ。」
檜佐木副隊長から背中をトンと押され皆の前で挨拶をする。
『一番隊から3か月ですが赴任する事になりました、夜神紫音です。よろしくお願いします。』
ペコッと頭を下げると檜佐木副隊長が俺の肩をポンと叩き
「いろいろ慣れない事もたくさんあるかもしれないが、わかんない事があればどんどん聞いてくれ。…そうだな…高遠ちょっと…」
檜佐木副隊長に呼ばれた高遠と言われた男は俺の前に立ちにこやかに挨拶してきた。
「四席の高遠です。仕事でわからない事があれば僕に聞いてくれ。」
とても人当たりの良さそうな印象を持った。
「んじゃ、高遠よろしくな。」
檜佐木副隊長は高遠四席に俺を預けると執務室へ向かった。
「それじゃ夜神君まずはこの仕事なんだけど…」
高遠四席が俺に丁寧に仕事を教えてくれた。
ところで、俺は九番隊に3か月赴任してきた訳だが、本当の目的は他にある。
本名西園寺菜桜れっきとした女です。一番隊から来たというのは嘘。ホントは二番隊に所属しています。私が何故男として九番隊に赴任したか。
それはさかのぼる事一週間。砕蜂隊長に呼ばれた。
『砕蜂隊長、お呼びでしょうか。』
「西園寺来たか…まずこれを読め。」
砕蜂隊長からふみを受け取り読み始めた。
『砕蜂隊長!!…これは!!真実なのでしょうか。護挺十三番隊に裏切り者がいるとは…』
「わからぬ…それでお前を呼んだのだ。
ここに書いている事が真実かどうか調べて欲しい。さすがに隠密機動が他の隊舎をウロウロするのはまずい。
素性を隠し夜神紫音として一週間後九番隊に3か月赴任し真実を突き止めて欲しい。」
『御意』
「それから檜佐木には、内密で二番隊から3か月潜入捜査をさせてもらう、とだけ伝えてある。さすがに何も知らぬと動きにくいだろうからな。
その他の事は他言無用だ。いいな。」
『わかりました。必ずや真実を突き止めて参ります。』
「…頼んだぞ、西園寺。」
そして私は夜神紫音として九番隊に赴任してきた。
「……仕事の内容は以上だ…。夜神君何かわからない事あったかな?」
『いえ…大丈夫です。ありがとうございます。』
ちょっと心配そうに俺の顔を覗いた高遠四席に苦笑いをして書類を受け取った。
俺は席に座りぐるっと部屋を見渡した。皆忙しそうに隊務をこなしていた。
『とりあえず…書類だけでも終わらせるか…。』
筆を取り書類を書き始めた。すると俺の近くに香水の匂いをプンプンさせた女が机の前に立っていた。
「紫音君…だよね?」
『そう、ですが…』
「私〜十二席のぉ岡咲リナって言うの。よろしくねぇ。それでね紫音君にぃこの書類渡してきてって頼まれたんだぁ。はぁいどうぞ」
俺の机の前で屈み谷間を見せながら、胸の近くに書類持って近づいてきた。
『…あ、ありがとうございます…。』
そう言って受け取ろうとしたら不意に俺の手が彼女の胸に当たった。
「やぁ〜ん。紫音君ったら…」
そう言って彼女は胸を隠した。
『あ…すみません』
いやいやわざとだろ?と思ったがこんなとこで揉め事は起こしたくないと思い素直に謝った。
「紫音君…ってちょっと大胆なのね。でもぉ仕事中はダメだよぉ。」
勝手な妄想に苦笑いをし、俺は書類をさっさと受け取りため息を付いた。
隊員達の反応を見てみると、「…またか」とでも言いたげな顔をしていた。
結局何も収穫のないまま一日が過ぎた。…と言うよりあの岡咲十二席に振り回された一日だった。