黒崎夫婦の日常シリーズ

□◎ただ、自然に
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久しぶりの休日。
ルキアは、浦原商店に頼んでおいたものを取りに行くことにした。
すると、夜勤明けで帰って来ていた一護が、一緒に行こうと言った。
「久しぶりに、散歩も兼ねて一緒に行かねえ?」
「それはいいが、夜勤明けで疲れているのではないか…?」
「そうだな…、ちょっと寝るから、行くのは夕方でいいか? 眠いのも確かだけど、お前と久しぶりに出かけたいのも確かだからな。」



そんな風に言われて、ルキアはふと笑みを零した。
疲れているにもかかわらず、一護が自分と出かけたいと言ってくれる…。
幸せだ、そう思った。
「ああ、もちろんだ。ゆっくり寝るがいい。私もちょっとやることがあるから、そちらを先にするよ。」
家でできるかと書類を持って帰って来ていたので、それに目を通して一通り作業をする。
その後、ルキアも少し昼寝をしてから、夕方一護と共に浦原商店に向かった。
「商品ならこちらに…。」



案内されて、ルキアが室内に入った後。
廊下に居た一護のところに、何かが飛びついて来た。
「いっちご〜! 会いたかった〜!」
そう言ったのは、浦原の研究に協力するために呼び出されていたネルで。
ネルは、一護に思い切り抱きついた。
「おわっ…! 待て待て待て! ぐえっ!」
豊満な胸にぎゅうぎゅうと顔を押しつけられて、一護はもがく。
それを冷めた目で見つめながら、ルキアは浦原に問いかけた。



「誰だ…? 見たところ、破面のようだが…。」
「ああ、ルキアサンはご存知ありませんか? ネリエルサンですよ。ネルサン、と言った方がわかりますか? 昔仮面を割られたことがあって子どもになってしまったんですけど、もとは第3エスパーダだった経験も持つ、れっきとした戦士です。アタシがどちらにもなれるような腕輪を作って渡しましたから、今は自由に子どもにも大人にもなれるんです。」
「ネル…、ああ、あの破面…。」
いつか、自分に一護とはどういう関係かと聞いてきたことがあったのを、ルキアは思い出した。




(あれは、こういう意味だったのか…。そういえば、ずいぶん一護になついていたな…。)
今なら、ルキアにもわかる。
ネルは、一護のことが好きなのだ。
それを知ってしまったら、一護に抱きついて嬉しそうにはしゃぐネルを、それ以上見ていられなくなった。
(私は、一護と結婚しているのだ…。一護は、私を選んでくれている。わかっているのに、なぜこんな気持ちになるのだ…?)
自分は、弱い…。
一護のこととなると、こんなにも…。



それを実感してしまったルキアは、その場に居たたまれなくなってそっと部屋にあるもう一つの襖を開け、そちらから部屋を出ようとする。
「ルキアサン…?」
「頼んでおいたものは、一護に預けておいてくれ。邪魔したな。」
ルキアは、一人で浦原商店を後にした。
そのまま穿界門を開いてソウル・ソサエティに向かう。
そして、朽木家へと戻った。
一護には、心配しないようにと連絡を入れておく。
一護が悪いわけではないのだから。
問題なのは、自分の心だ…。



出かける前は、すごく幸せだった。
だからこそ、余計にあの場面はこたえた。
『少し、一人で考えたいことがある。落ち着いたらそっちに戻るから、わがままを聞いてくれ。朽木家に戻っているから、心配はいらない。』
こんな風に言ったら、何事かと一護が迎えに来る可能性もある。
だから、ちよと清家に頼んで、一護が来ても今は帰らないと言っていると伝えてもらうように頼んだ。
「一護が悪いのではないのだが、私が落ち着いて考えたいことがあるのだ。だから、今は帰らぬ。落ち着くまで待ってくれと、伝えてほしい。」
「かしこまりました。では、そのようにいたします。」
「すまない、頼んだ。」



その頃の一護は…。
何とかネルを引き剥がして、ルキアが入った部屋に入ってみる。
でも、誰もいなかった。
(あれ? 確かにここに入ったはずなのに…。まさか、あっちから出て行った…?)
もう一つの襖を出てみたが、ルキアの姿はない。
霊圧を探っても、わからない。
怪訝に思っていた一護は、連絡を受け取って眉間の皺を深くする。
(なんだよ、これ…。)
すると、浦原が出てきた。



「あ、用事は終わりました?」
「俺には用事なんてねえよ。」
「それにしてはずいぶん楽しそうでしたねえ。」
「どういう意味だ?」
「いいえ、別に。ああ、ルキアサンから伝言です。頼まれたものは黒崎サンに預けておいてくれ、と。お持ち帰りください。お代は注文の際に頂いてますので〜。」
「ルキアはなんで急にいなくなったんだ? 浦原さん、知ってるか?」
「私にもわかりませんねえ。」
いやにニヤニヤしている浦原を見て、絶対知っているだろう…と思った一護だったが、浦原相手に言い合いをしても分が悪いことはわかっている。
(まあ、朽木家にいるって言うんなら、心配はないか…。)
そうは思ったが、どうにも釈然としなかった。
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