中編

□【完結】例えば、こんな出逢い方
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【1話】



「隊長! 報告があります。」
「なんだ?」
「流魂街に死覇装を着た子どもがいるとの噂の件ですが、確かめに行ったところ、事実でした。」
「それは前例のないことだな。調査が必要か…。明日、私が直接出向こう。」
体調を崩した浮竹が隊長職を辞した。
それで、ルキアが次の十三番隊の隊長になった。
ちなみに、白哉との混乱を避けるために、ルキアは下の名前で“ルキア隊長”と呼ばれている。
現段階では、副隊長は空席。
以前と同じように、三席を二人置いた状態が維持されていた。
十三番隊が管轄する地域で、最近立っていた噂を検証しようと、今日隊士が調査に出向いた。
そこで、やはり死覇装を着た子どもがいたと…。
通常、死神になるには霊術院を卒業しなければいけない。
仮に霊力がある者がいたとしても、死覇装を着ているはずがないのだから。
現に、ルキアや恋次もそうだった。
霊力は持っていたけれど、他の流魂街の住人となんら変わることはなかった。
(珍しいこともあるものだ…。)



ルキアの頭の中には、そんな普通では考えられないようなことを起こす人物として、ある人間の名前が過った。
でも、その人物…、黒崎一護の魂送はいたって普通通りで、むしろ何かある方が普通なのではないかと身構えていたソウル・ソサエティの面々は、拍子抜けしたほどだった。
生前の記憶が残っているわけでもなく、霊力が残っているわけでもなく、死後は通常の魂と全く変わらなかった。
だから、通例通り流魂街に送られたのだった。
最後の戦い以降、空間が不安定になり、現世とソウル・ソサエティとの融合によって世界が崩壊するのを避けるために、ソウル・ソサエティと現世との通行は極力控えるようにと指示が出された。
虚退治や魂送のために現世に留まる死神も、一月に一回ソウル・ソサエティに戻れればいい方で。
長期の任務を受けて、報告は電令神機を通してのみとされる死神が多数いたのだった。



霊力が高い死神が通れば通るほど、空間の不安定さが増す。
だから、特に隊長格の死神は厳正に穿界門を通ることが禁じられた。
そういった事情もあって、ルキアは最後の戦いの後現世に出向くことはできなかったし、一護もまた浦原からそれを聞かされて、その後ソウル・ソサエティと関わることができないまま一生を終えたのだった。
だから、ルキアも一護もお互いその後どうなったかは知らないままだった。
そうしているうちに一護の寿命が尽きて、ソウル・ソサエティへと送られたというわけだ。
(それを考えても、あやつは関係ないか…。)
そんなこと思いつつ、何となく落ち着かないルキアだった。



次の日の夕方。
書類仕事を済ませたルキアは、2人の部下を連れて流魂街に出向く。
そこで見かけたのは、オレンジ色の髪の毛の、死覇装を着た小さな子どもだった。
(オレンジの髪の毛…!? まさか、そんなことが…。)
現世の感覚で言えば、まだ幼児といったところだろうか。
比較的治安のいい場所であることもあり、死覇装を着た子どもに危害を加えようとする住人はいないようだが、どこかみんな遠巻きに見守っているのも確かだった。
その子は、おどおどとルキアと部下を見回す。
「私の名前は朽木ルキアと言う。心配しなくていい、私達は貴様を傷つけに来たのではないのだ。名は何と言う?」
ルキアは、その子どもと目線を合わせるように膝をつくと、尋ねた。
意識して優しく尋ねたルキアに警戒心をやや解いたのか、その子はぽつりと名前を答えた。
「黒崎一護。」
「…!?」
「隊長…!」
同行した隊士は昔からの死神で、有名な死神代行の名前を知っていた。



「ああ、信じがたいことだが…。なあ、一護。今までのこと、何か覚えているか?」
すると、その子は首を振る。
「何も。気付いたらここにいた。」
「そうか…、この服、どうしたのだ?」
「わからない…。」
「わからないんだな。この服を着られるのは、死神だけなのだが。死神については何か知っておるか?」
再び、その子は首を横に振った。
(一護の魂は、こちらに送られた時のまま、老人だったと聞く…。なぜ子どもになっておるのだ? 死覇装とは…? でも、こうなったらこのまま置いておくわけにはいくまい。)
あれこれ考えてから、ルキアは一護に告げる。



「一護、これから私が言うことをよく聞くのだぞ。その服を着た者は、みんな死神の力を持っているんだ。死神は、流魂街…、つまりここのことなのだが、ここで暮らすことは出来ぬのだ。」
「じゃあ、僕はどうすればいいの?」
「仲間がたくさんいるところに行こう。何も心配することは無い。私が護ってやるから。」
ルキアの言葉を聞いた小さな一護は、「うん!」と頷いて、やっと笑顔を見せた。
ルキアは、一護を抱き上げる。
一護は、ルキアの羽織を、小さな手でギュッと握った。
(か、かわいい…! いやいや、隊長の私が緩んだ表情は見せられぬ。)
ルキアは一護に気をつけながら瞬歩を使い、瀞霊廷に戻る。
「うわー、早い!」
一護は嬉しそうにしているから、問題はないだろう…。
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