短編

□霞む世界・別世界
1ページ/5ページ

ソウル・ソサエティに平穏はなかなか訪れないようで。
はるか昔、法を犯して現世を我が物にしようとし、現世を危険に陥れたという理由で封印されていた一族が、結界を破って出て来るという事件が起こってしまった。
結界の内側であれこれ画策していたらしく、かなり強大な力を持って出て来た。
このままでは再び現世に危険が及ぶ。
ソウル・ソサエティでは、その一族を殲滅するようにとの指令が出された。
でも、相手が強大な力を持っているだけに戦いは長引き、こっそり現世に抜け出したヤツらが出て来て、何人かの隊長と副隊長、席官達が現世にも出向いた。



その霊圧を感じて一護が気づかないわけがなく、合流して相手を倒し、そのままソウル・ソサエティに現世にそいつらが侵攻してきては困るという理由で援軍に駆け付けてきたらしかった。
らしかった、というのは、私がそいつらのうち逃げ出した奴らを追って遠くまで恋次と一緒に出ていたからで、戦闘が終わるまで顔を合わせることが無かったのだった。
恋次と追っていた敵は、席官クラスの力を持つ者から、副隊長クラスの力を持つ者まで複数いた。
だからこそ、空間を凍らせて複数の敵に相対することができる私と、斬魄力を飛び道具のように使える恋次がセットで選ばれたのだった。
なにより、私達はお互いの力を知っている。



私の卍解のことは京楽総隊長にも知れるところとなり、兄様の進言もあって、私が危険な任務に就く時は六番隊と行動を共にすることが多くなった。
その配慮はありがたいが、配慮されるようではまだまだ実力不足だな…とますますの鍛錬を誓うきっかけにもなった。
通常、卍解を会得してからさらに10数年の鍛錬が必要と言う。
私が卍解を自在に操れるようになるには、まだまだ時間が必要なんだ。
とはいえ、敵は鍛錬が終わるまで待ってなどくれない。
だから、まだ解くのに時間がかかる未完成の卍解ながらも、戦いに役立てなければと心に誓ってこの場にやって来たのだった。



追いつつ、袖白雪は始解状態まで解放しておいた。
極力、体温は下げないように。
ずっと追いすがっていくと、そいつらは2対大勢という数の差に気を良くしたらしく、そこで足を止めた。
おそらく、私と恋次を仲間から引き離して、嵌めたつもりなのだろう。
でも、止まってくれれば好都合と言うものだ。
「恋次。」
「わかってる。」
私達の会話は、これだけでよかった。
「卍解! 白霞罰」
私はすぐさま卍解する。
相手が一か所に集まってくれていたおかげで、恋次の手を煩わすことなく、一瞬で全てが終わった。



だけど、味方の霊圧が一気に消えたことを不審に思ったらしく、新手が現れるのが見えた。
それでも、焦ってはいけない。
恋次を信じるんだ。
私は、ゆっくり卍解を解くことに集中する。
恋次が、すぐさま卍解して迎え討ってくれた。
「やったな!」
「ああ!」
「よし、戻ろうぜ。」
恋次の言葉に合わせて瀞霊廷に戻ると、そちらもほぼ片付いていた。
恋次は、兄様の元に報告のために向かった。



一人になったところで、声を掛けられる。
「ルキア!」
「一護。こっちに来てたんだな。霊圧を感じるとは思っていたが。」
帰る途中で、一護の霊圧を感じていたから、いるだろうとは思っていた。
だから、一護が帰ってしまう前でよかったと思った。
「ああ。あいつら、現世にまで押しかけて来やがったからな。ルキアはどうしてたんだ?」
「逃げ出した奴らを恋次と一緒に追いかけて来た。」
「そうか。片付いたのか?」
「当然だ。でなければ戻ってくるはずが無いだろう。」
「そういやあそうだな。」
「一護、これからどうするんだ? 現世にすぐ戻るのか?」
「いや、別に急ぎの用事はねーけど。」
「今日は、戦闘もあったから通常業務は終了にして解散にするそうだ。よければ、夕餉を一緒に食べて行くか? ああ、でも遊子が寂しがるか…。」
「だったら、お前が現世に来ればいいだろ。」
「は…?」
「業務終了後なら、規則違反じゃねーだろ。」
「まあ、そうだが…。」
だからといって、私が簡単に一護の家に出入りするのもな…、と迷っていると、京楽総隊長が近づいてきた。



私は、片膝をついて敬意を表しつつ、総隊長を迎える。
「一護君。今回も大活躍だったねえ。ありがとう。」
「いえ、現世を護るためですから。」
一護の返事を聞いた京楽総隊長は、私におっしゃる。
「ルキアちゃん。一護君も疲れてるだろうし、現世に送ってあげてよ。」
「かしこまりました、総隊長。」
京楽総隊長は、優しげに笑って私におっしゃった。
「そんなにかしこまらなくてもいいんだけど。僕は山じいとはタイプが違うからねえ。」
そうは言われても、総隊長相手に失礼な態度を取れるはずもなかった。
「頼んだよ。じゃあ、行っておいで。」
「はい。」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ