短編

□光の下で
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付き合おうと言ったのは、俺。
クリスマスが近くなり、町が赤や緑・金銀の装飾とイルミネーションで溢れるのを大学の帰りに見ていた俺は、ふとこれをルキアに見せたいと思ったんだ。
17か月離れたことで、俺はルキアがどれだけ俺にとって大切な人かを実感した。
最初に俺に力をくれたのがルキアで。
俺が力を取り戻した時も、そのために俺のところに来てくれたのがルキアだった。
小さな体。
それなのに、感じさせる大きな存在感。
力を取り戻せたことはもちろんだけど…。
ルキアの姿がまた見えるようになった。
その事実が、酷く嬉しかった。



俺は、仲間としてではなく、大切な一人の女性としてルキアが好きなんだと実感するのに、時間はかからなかった。
だからといって、すぐに告白なんてできなかった。
ルキアがどう思っているか、わからなかったから。
嫌われては無いと思う。
でも、“仲間”というくくりから外れようとしている俺を、どう思うかはわからない。
最悪、好きだと伝えて、『死神と人間は一緒にはいられぬ』なんて言われてルキアが離れてしまったらと考えると、怖かったのかも知れなかった。



それからも、ルキアが現世に来た時には気軽に一人暮らしを始めた俺の部屋に入り込んだり、そんな関係のまま数年が過ぎた。
しびれを切らせて、現世での任務帰りだと言いながら俺の部屋にふらりと寄ったルキアに、結局言ってしまった。
ルキアは、それを受け入れてくれたんだ。
まあ、その時にもほんとにコイツは…、と思わされた。
「なあ、ルキア。俺と付き合って?」
単刀直入に言えば、あっさりと「いいぞ。」という返事。
やった、ルキアも同じ気持ちでいてくれたのか…?
そう思った俺に、信じられないルキアの言葉が続いた。



「で、いつ、どこにだ? 買い物にでも行くのか? 私は副隊長だから、それほど時間があるわけではないのだが…。都合がつけば、な。」
なんだ、その漫画のような展開は…。
思わず頭を抱える俺を、ルキアは不思議そうな眼差しで見ていた。
それを言うなら、“俺と”じゃなくて“俺に”だろ?
ったく…。
「ちげーよ。」
「は…? 意味がわからんのだが…。付き合うという言葉に、他に意味なんぞあるのか?」
「あるに決まってるだろ!」
っていうか、普通そっちが先に浮かばねーか?
脱力する俺を不思議そうに見つめるルキアを見ていると、本当に意味がわからねーんだな、と実感してしまった。


「そうじゃなくて。手っ取り早く言うと、俺と男女のお付き合いをしませんか、ってこと。」
なんで俺がこんな恥ずかしいセリフを言わされなきゃいけねーんだ?
何もわからないルキアに呆れたり、焦ったり。
どうして俺がこんなに振り回されなきゃいけねーんだよ。
まあ、最初からそういう関係だったと言えないこともないけど…。
すると、ルキアの方も焦り始めた。
「す、すまぬ…。あまりに予想外だったものだから…。」
「俺がそんなことを言うのが変か?」
「ち、違う! 私に対してそんなことを言う相手がいるなどと、考えたこともなかったからだ。」


その言葉を聞いて、ふと浮かんだのは赤い髪の死神。
あれだけ側にいて、大切だというオーラを出しているのに、全く気付かれていないことをちょっとだけ気の毒だと思ってしまった。
でも…。
いくらアイツがルキアのことを思っていたとしても、ルキアのことは譲れねー。
だから、俺はルキアに迫った。
「で、どうなんだよ?」
「ど、どうとは…?」
いつもの堂々とした姿がまったく感じられないほど、ルキアは動揺していた。



「返事。ここまではっきり言ったんだから、答えを聞かせろよ。」
「でも…、私は死神で、貴様は人間だ。私がそれを受け入れたとしても…。いずれ、時に阻まれる日が来るのだ…。それなら、いっそのこと“仲間”のままでいたほうが、後で辛くならない…。」
「辛くなんて、ならねーよ。そんなことはさせねえ。ずっと一緒にいればいいだけだろ。」
「貴様は簡単に言うけど、私は貴様の10倍くらい生きてるんだぞ! これからもその時間の流れが変わることは無い。一護が一人で大人になって行くのに、私はずっとこのままだ。いずれ、それが不自然になる時が来る。」
ルキアの言う通り、ルキアの姿は初めて出会ったときからほぼ変わっていない。



変わったのは、髪型くらいか…。
それから、副隊長になったこと。
それは大きな変化だけど…。
でも、そういうことじゃねーだろ。
外見が変わるとか変わらないとか、見た目の年齢差が広がることとか、そんなことはどうでもいい。
「たとえ外見が変わったって…。俺達の関係は、初めて会ったあの時からずっと変わってねーだろ。」
「それは確かにそうだが…。」
「それとも、お前が嫌なのか? 俺が爺さんになっていくのが。」
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