短編

□もっと知りたい
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「あ、お兄ちゃん。今週の土曜日、パーティーするから予定あけといてね。」
遊子に言われて、一護は首をかしげた。
「パーティー? 何の?」
「もう、お兄ちゃんたら。忘れてるの? ルキアちゃんのお誕生日。当日はお仕事だって言うし、あっちのみなさんがお祝いをするから抜けられないって聞いたから、ルキアちゃんのお仕事がお休みの日に来てもらうことにしたの。」
「彼女の誕生日を忘れるなんて酷いんじゃない? 一兄。」



二人の妹に責められつつ、一護は思う。
(俺、忘れてるどころか、あいつの誕生日知らねえ! ってか、死神に誕生日なんて概念があるのかよ…。遊子も夏梨も、いつの間にルキアとそんなに仲良くなってんだ!?)
ぐるぐるしつつ、一護は聞く。
「いつなんだ? ルキアの誕生日。」
「まさか、お兄ちゃん知らないの…?」
「えー? 冗談でしょ? 今日だよ、1月14日。」
双子の非難に満ちた目が向けられ、いたたまれなくなった。
(まさかの当日!? どうしろってんだよ。でも、聞いてよかった…。)



「ルキアちゃんは、ちゃんとお兄ちゃんの誕生日聞いてたのに…。7月のイチゴの日だから覚えやすいな、なんて言ってたよ。私達の誕生日も聞いてくれたんだから。」
(ルキアの方はちゃっかり確認してやがるのか。ったく…。)
「わかった、土曜日はあけとく。」
「ちゃんとプレゼント用意しておいてよ!」
「わかってるって。」



言いながら、一護は違うことを考えていた。
(今日はあっちでお祝い、って言ってたよな…。白哉が祝いの席でも設けるんだろう。白哉はともかくとして、ルキアは俺の彼女なのに、他の奴らが先に祝うのはどうも納得がいかねえ。いや、本音を言うなら、白哉にだって先に祝われたくはねーよな。)
知らなかった一護が言う権利も無いような気がするが…。
あまりにルキアとの距離が近すぎて、そんな友達にさえ当たり前に聞くような会話を今までしなかったのだと思うと、不思議な感じがした。



授業中、ふとした瞬間に考えごとをする一護。
そして放課後。
学校が終わるとすぐに一護は寄り道をしつつも急いで家に帰り、代行証を手にした。
向かう先は、浦原商店。
「浦原さん! あっちに用事がある。穿界門を開けてくれねえか?」
「やっと来ましたか。もう、準備できてますよーん。」
「は…?」
浦原は、一護が手にしている物を見て、ニヤニヤ笑っている。
その肩に乗った黒猫も「若いとは素晴らしいのう。」なんて暢気に言っている。
猫なのだから表情があるとは思えないが、それでも絶対にニヤニヤ笑っているだろうという確信が一護にはあった。
(バレてる、よな…、これ…。)



恥ずかしく思いつつも、一護はここまで来たのだから、と穿界門に飛び込んだ。
ソウル・ソサエティでは、また勤務中の時間。
一護は、まっすぐに十三番隊の隊舎を目指した。
そして、執務室に通してもらうよう伝言を頼む。
伝言を頼まれた相手は、一護が手にしているものを見て訝しがりつつも、ルキアに一護が来たことを伝えたのだった。



「どうぞ、こちらへ。」
執務室に入ると、中にいたのはルキアと三席の二人。
「ルキア。」
「どうしたんだ? 一護。急にこちらに来るなど、何か困りごとか?」
「いや、これを渡しに来ただけだ。」
一護がルキアに差し出したのは、紫色と白の花がメインに使われた、小さめの花束だった。
「…?」
ルキアが首をかしげると、一護は言う。
「お前、今日誕生日なんだろ? だから…。」
「え…、まさかそのためだけに…?」



週末には、遊子と夏梨がパーティーを開いてくれると言っていた。
だから、まさか一護が当日だからとここまで来てくれるなんて思ってもみなかったルキア。
おそるおそる、といったように手を伸ばして、その花束を受け取った。
「ありがとう、一護…。」
ルキアは、ギュッとその花束を胸に抱きしめる。
そんな姿に、一護はドキッとしたのだった。
(かわいすぎるだろ、この反応…。)



「うわー、綺麗! 副隊長のイメージにぴったり!」
紫は、ルキアの瞳の色。
白は、ルキアの斬魂刀の色。
誰から見てもルキアのことを思って作ってもらったんだとわかる、綺麗な花束だった。
「愛されてるなあ、副隊長。」
清音と仙太郎二人に言われ、顔をカーッと赤らめるルキア。
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