短編

□護りたいもの
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それは、突然のことだった。
何の前触れもなく、多数の敵がソウル・ソサエティに侵攻してきた。
狙いは、現世とソウル・ソサエティの均衡を崩し、世界を混乱に陥れること。
混乱し、生存者が減った世界を支配する。
そんな、どうしようもない野望を抱いた一族の仕業だった。
隊長格の死神は二手に別れ、ソウル・ソサエティの守護と現世の守護に就く。



相手も、二手に分かれて襲ってきた。
かなり強い相手。
隊長格も卍解を余儀なくされ、それでも互角の戦いを繰り広げる形だった。
現世に赴いたのは、六番隊・十番隊・十三番隊だった。
四番隊は、二手に分かれて救護体制を整えている。
そして、現世の戦いには、霊圧のぶつかり合いを感じた一護も参加した。



ルキアから簡単に説明を聞いた一護は、現世が危ないとすぐさま卍解して敵を迎え撃った。
卍解を会得している者はまだいいが、乱菊とルキアは苦戦を強いられていた。
ルキアの相手は、巨大な体をした男だった。
ルキアの数倍もあろうかという、その体。
そこから放たれる斬撃は重く、ルキアはそれを受け止めるたびに体力を消耗する。



それでも、剣を受け止めながら、相手に気づかれぬようルキアは言霊の詠唱をする。
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ」
そして、隙を見てそれを放った。
「破道の七十三! 双蓮蒼火墜!」
「うわあーっ!」
相手の大男が吹き飛ぶほどの威力だった。
ルキアは次の攻撃に備えて、身構える。
そして、相手の動きを奪う隙を窺っていた。



再び、言霊を詠唱する。
「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ」
相手が立ち上がる。
その瞬間。
「縛道の六十一! 六杖光牢!」
ルキアの放った鬼道が相手を捉え、相手は動けなくなった。
すかさず斬りかかるルキア。
その時…。
背後から、別の敵が迫っていた。



両側から斬りかかってくる、新たな二人の敵。
ルキアは間一髪それをかわし、一人を斬りつけた。
さらに、もう一人加勢する。
飛び道具のように武器を操る男。
それをかわす間に、別の男が近づいて斬りかかる。
「破道の三十三! 蒼火墜!」
ルキアは必死に応戦した。
でも、いかんせん三対一では分が悪い。



一護は、それを視界の端に捉えながら、ルキアの加勢に行こうとした。
「ルキアっ!」
(ちきしょう! 女相手に三対一かよ、卑怯だろ!)
でも、その前に強大な霊力を放つ男が立ちふさがる。
「どけっ!」
焦ってする攻撃は、その男には届かない。
何とか男をどかせようと一護が攻撃を続けるうちに、ルキアの胸を刃が貫いた。
「うぁあああ!」
響き渡るルキアの悲鳴。
ルキアは、ついにその場に倒れて動けなくなった。



ルキアは、霞む視線の先で、一護が自分の方を気にしていることに気づいた。
そのせいで、一護は強大な霊力を持っているあの敵に、背を向ける格好になっている。
「莫迦者! 後ろだ!」
精いっぱいの気力を振り絞って、ルキアは声を上げる。
一護はパッと振り返って、その敵に渾身の月牙を放った。
「ぐっ…!」
声を上げたせいで、ルキアの傷口からはバッと血が溢れだした。
辺り一面を、赤く染めていく。
それを見た一護の霊圧が、大きく乱れた。
自分の存在が、一護の霊圧を乱す。
敵に、背を向けさせてしまう…。
それを感知したルキアは、自分が戦いの邪魔になるのなら、いっそのこと…、と即座に決心した。
(この戦いに敗れると、現世も、ソウル・ソサエティも危ない。だから、一護の心を乱すわけにはいかぬ。それなら…。)



ルキアは力の入らない腕を持ち上げて、袖白雪を自身の喉元に押し当てた。
「何してんだよ、ルキア…。止めろ、ルキアッ!」
一護の、まるで叫び声のような声がこだました。
(最後まで、足手まといで済まぬ…。)
その手にグッと力を入れようとした瞬間。
「縛道の六十一 六杖光牢」
ルキアの体は鬼道で動きを止められ、その衝撃でルキアは気を失った。
遠くで戦っていた白哉は、霊圧を感知することでルキアが複数の敵に囲まれていたこと、ルキアの霊圧が急激に弱くなったことを察知して、敵を倒してすぐにルキアの元に急いで向かったのだった。
ルキアに鬼道を放った白哉は、一護に向かって言う。
「兄のすべきことは何だ? 今は現世を守るために戦うべき場面だ。ルキアに構うな。」
「くっ…。」
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