黒崎夫婦の日常シリーズ

□今日は何の日?
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「ただいま〜、ルキア。」
「おかえり、一護。仕事お疲れ様。」
「ルキアの方こそ。怪我とかしなかったか?」
「そのようなヘマはせぬ! 私を誰だと思っておるのだ。」
「そーでしたね、隊長サマ。」



ここは現世、黒崎夫妻の住むアパート。
妻ルキアさんのお仕事は、護廷十三隊十三番隊隊長。
かたや夫一護さんのお仕事は、医師。
ソウル・ソサエティに特例を認められて、一護の生前から既に夫婦という形を取っている二人。
ルキアは、穿界門を経由して仕事に通っていた。



もちろん、それは現世での生を全うした後の一護を、護廷十三隊にすんなりと迎え入れるための作戦でもあるが…。
本人ももちろんその気なので、それに関しては問題が無い。
むしろ、ソウル・ソサエティに遊びに行った際に「一護、早くこっちに来いよ。」などと一角に言われ、「俺に死ねってことか!」と言いながらも、死後も自分を迎え入れてくれる場所があるんだと嬉しそうに笑う一護がいたりする。
そんな同僚の言葉を聞くたびに、一護がみんなに受け入れられていることに嬉しさと感謝の念を抱くルキアだった。



一護には夜勤があるし、急患で帰りが遅くなることもある。
ルキアはルキアで長期遠征に出かけることもあるし、虚が出れば勤務時間がどうのとか言っていられない場合もある。
すれ違いも多いが、だからこそ一緒にいられる時間は二人にとって大切なものだった。
今日は一護も夜勤ではなく、ルキアは少しの残業で済んだ。
一護よりも早く帰宅したルキアは、夕食を作っていた。



煮物、みそ汁、焼き魚におひたし。
典型的な和食が用意されていくキッチンを見て、一護は「美味そう。」と思わず言う。
その言葉を聞いて、一護に気付かれないようにこっそり微笑むルキアに実は気付いている一護は、かわいいな…と思いながらそれを見ているのだった。
冷蔵庫に何かをしまった一護は、食卓について頬杖をつきながら、ルキアがぱたぱたと動き回るのを見ている。
そうしているうちに、テーブルに並んだほかほかと湯気を立てるご飯。
それを見るたびに、一護は幸せだな…と思うのだった。



ルキアが遠征なんかでいない日はコンビニなんかで食事を買って帰ることがほとんどだし、また一護が夜勤の日はルキアは朽木家に泊まるので、こうやって二人で食卓を囲める日は二人にとって楽しみな日でもあった。
「さ、準備できた。食べよう。」
「いただきます!」
ご飯を口に運び、みそ汁を飲んだ一護はほうっと息を吐く。
「やっぱ、お前が作る飯は美味いな。」
「い、一護…? どうしたのだ、一体。」



一護の様子を見ていれば、そう思ってくれていることは普段からわかっている。
でも、照れ屋の一護のことだ。
こんな風に、はっきり口に出されることはほぼない。
「ん? 何となく、言いたくなっただけだ。」
「そ、そうか…?」
ルキアはどうしていいのかわからないといったようにしつつも、少しだけ頬を染めた。



むず痒いような空気が、二人を包む。
照れくささを隠すように黙ってもくもくとご飯を食べ進めるルキアを、一護が優しいまなざしで見つめていた。
「今日は何してたんだ?」
「いつものように、書類仕事が中心だな。でも、午後からは少し虚討伐にも出てきたのだ。少しは体を動かさないと、書類仕事ばかりではなまってしまいそうだ。まあ、それも大切な仕事の一環であることはわかっているんだがな。」
「あの量、半端ねえもんなあ…。」
休みの日には、時々ルキアの隊舎に顔を出して虚退治や隊の仕事を手伝ったりもしている一護。
うず高く積まれた書類を思い出して、しみじみとそう言った。



「一護は今日はどうだったのだ? 忙しかったか?」
「んー、相変わらずって感じかな。でも、今日は重い症状の患者はいなかったからそれはホッとした。」
「医者でも、やはり人が苦しむのを見るのは辛いものだろうな…。」
「何とかしたいけど、すぐにどうこうできない時もあるのが正直なところだからな。そんな時には、力不足が悔しくなることもあるさ。」
「一護は、一護なりに頑張っておるのだ。その気持ちが、いずれもっと高い技術の習得に繋がるのだろうな。我々だって、最初から強いわけでも、何でもできるわけでもないからな…。それに、その分相手の病気が良くなれば、嬉しいものでもあろう。」



ルキアにそう言われると、何となくもっと頑張れるんじゃないか…。
そんな風にふっと心が軽くなり、また前向きにもなれるから不思議だ。
隊長にまでなっているルキアだって、人知れずたくさんの努力をしてきた。
まあ、それは一護と白哉や恋次などごく一部の死神が知っているだけだが…。
そういうルキアの経験に裏打ちされた言葉だからこそ、響くのだろう。
人間を、現世を護る。
そんな使命を胸に抱いて、ルキアは今日も精一杯働いているのだから。



そんな何気ない話をした後、テーブルを片付け始めたルキアを見て、一護も手伝う。
「疲れているのだろう? 座っていてもいいのだぞ。」
「それはお前だって一緒だろ。それに、二人でやれば半分の時間で済むじゃねえか。その分、後でゆっくりしよう。」
「そうか、では頼む。」
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