黒崎夫婦の日常シリーズ

□勘違いの原因は?
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勤務が終わった、夜。
一護は、ふーっとため息を吐きながら家に向かった。
今日は、事の他忙しかった。
疲れた…。
そんなことを考えながら、窓を見上げる。
この時間なら、ルキアが帰っているはずなのに…。
部屋の電気がついていない。



(残業か…? ルキアのやつ。)
考えながら部屋に入ると、テーブルの上に1枚の手紙。
『浮気とは、見損なったぞ! 莫迦一護!』
そんな言葉の下に添えられている、2種類の絵。
なんともコミカルな絵柄が、どう考えても書かれている言葉と釣り合わないが…。
大量の花びらとおぼしき物に囲まれている、どうやら死覇装姿らしい自分、と思われる人物。
(千本桜景厳…、か…?)
たらーっと、一護の額を冷や汗が伝う。



さらにその下には、真っ白な衣装を纏って刀を構えたウサギと、辺り一面が凍って見える景色。
凍った景色の中心地には、やはり死覇装を着た自分らしい人物が描かれている。
(白霞罰…? 待て待て待て、シャレにならねえっての、これはっ!)
ルキアの卍解は、自身の危険と引き換えに、絶大な威力を誇る。
いくら一護といえど、あの中心に置かれては生きて帰れる気がしない。



(いやいや、その前になんでコイツはこんなに怒ってるんだ? 浮気なんて、そんなことあるわけねえのに。何を勘違いしてやがる?)
現世にルキアがいる場所として考えられるのは、このアパート、黒崎家、そして某商人の家くらいだ。
死神化した一護は黒崎家に近づいてみたが、ルキアの霊圧はない。
某商人の家にも、ルキアはいなかった。
しかたなく、穿界門を開いてもらう。
現世にいないのなら、ソウル・ソサエティに決まっている。



(ったく、面倒なことをしやがって…。直接文句でも言えばいいだろうが。)
一護の機嫌も、かなり悪い。
「黒崎サン、ご機嫌斜めですねえ。」
「訳のわからねえ勘違いをして、勝手に怒って出て行ったヤツがいるからな。」
「おやおや。それは災難ですねえ。」
「んなこと、思ってもねえくせに…。」
(浦原さんのことだから、楽しんでるに決まってんだよ。こうやって穿界門をすんなり開けてくれたことがその証拠だな。)
長い付き合いだ。
それくらい、すぐわかる。



ソウル・ソサエティに着いて、怒りを覚えつつルキアの霊圧を探る。
(この方向…、隊舎だな。)
絵には、千本桜も描かれていたが…。
さすがのルキアも、朽木家に逃げ帰れば取り返しのつかない騒ぎになることは理解しているらしい。
ルキアの霊圧は、十三番隊の隊舎の方向にあった。
普段からルキアの仕事を手伝いに来ることがある一護は、すでに顔パス状態で。
難なく隊舎内に入りこむことに成功した。



隊首室を目指して扉を開けると、いきなり座布団が飛んできた。
それを、バシッと抜群の反射神経で叩き落した一護。
「テメー…、何考えてんだよ。」
「うるさい、私は怒っているのだ! この浮気者。」
「それ自体が間違ってるって言ってんだよ。なんで俺が浮気なんかしなきゃいけねえんだ? んなことするくらいなら、住む世界の違うお前と結婚なんてするわけねえだろうが!」
「その盲点をついて、というやつなのではないか?」
「昼ドラでもそんな展開ありえねえよ。ってか、なんでお前はそんなことを考えてるんだ?」



すると、ルキアはこれ以上ないくらいのジト目で一護を見た。
「あくまでしらを切るつもりだな? では聞こう。貴様、最近よく若くてすらっと背の高い、胸も豊満な美女と歩いているではないか!」
「は…?」
一護の脳内には?マークが溢れている。
(いつ…? どこで、俺が…?)
「仕事で遅くなるなどと言っておいて、本当は浮気なのだろう?」
(仕事…? あ…!)



「ああ、それか…。」
「認めるのだな!?」
「あれ、うちの病院の看護師な。家がある方向が一緒だから、遅い時間の帰宅の時には用心も兼ねてそいつの家があるまで一緒に歩いてるだけだ。ちなみに結婚してるし、旦那もそれを知ってて助かるって言われてる。」
「は…?」
「ごめんな、ルキア。言わなくて余計な心配させて。まさかお前が俺がその看護師と歩いてるところを見ることがあるなんて思わなかったから、言わなくても問題ねえかと思って。」



そう言った後、一護ははたと考える。
(そういやあ、何でルキアは俺がその看護師と帰ってるのを何度も見た何て言うんだ? もしかして…。)
「お前…、なんでそれを見てるんだ? もしかして、俺の職場に来たのか…?」
「え、いや…、それは…。」
(一護と一緒に帰りたくて、病院まで寄ってみたなど…。言えるか、莫迦者!)
急に立場が悪くなり、わたわたし始めたルキアに、一護がたたみかけるように言う。
「そんなに早く俺に会いたかったのか…?」



かあああーっと真っ赤に染まったルキアは、一護に向かって手の平を向ける。
「う、うるさいわっ! 莫迦一護! 縛道の四、這…っ!」
「バーカ、その手は食わねえよ。」
一護はルキアの手を素早く掴んで鬼道を防いだ。
(この暴れ方…、図星だな。)
内心ルキアをかわいいと思うが…。
(だからって、浮気を疑われたことを許すわけにはいかねえ。)



「勝手に浮気を疑って、挙句の果てに縛道を使おうとするとはな…。そんなに俺を怒らせて楽しいか?」
「…。」
「俺に何か言うことは?」
「…。」
「そうか、わかった。言葉じゃなくて体でわからせて欲しいってことだな。」
「ちっ、違う…! 悪かった、一護!」
「もう遅い。とりあえず、帰るぞ。」
一護はルキアを小脇に抱えると、そのまま隊首室を出ていく。
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