黒崎夫婦の日常シリーズ

□家族ってどんなもの?
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明日は、久しぶりに夫婦そろっての休み。
ルキアも一護も、とても楽しみにしていた。
どこかに行ってみるか、それとも家でのんびり過ごすか…。
そんなことを言い合う、寝る前の一時もまた楽しいものだった。
でも、次の朝の遊子からの連絡で、それどころではなくなってしまう。
遊子の子どもの調子が悪いということだった。



その日はちょうど現世では日曜日に当たり、医療機関は当番医しか開いていない。
そこまでして受診すべきかどうかを迷った遊子が、一護に助けを求めてきたのだった。
「悪い、ルキア。遊子の子どもが調子悪いんだと。」
「それは大変だ、すぐに行ってやれ。」
「悪いな、埋め合わせはまた今度するから。」
「非常事態だ、気にするな。」
そう言って見送ろうとしたルキアだが…。



いざ、一護が玄関に向かった時、何かを言いかけた。
「一護…。」
「ん? どうした?」
「いや、何でもない。早く行ってやれ。」
一護は気にしながらも、状況が状況だけに帰ってからゆっくり聞こうと家を出たのだった。
本当は、ルキアはそのころから異変を感じていた。
何やら、体が痺れる気がする。
(とにかく、休もう…。)
ベッドに行って、横になる。
横になっていても、何やら重苦しい感覚を覚えた。



それから、しばらくの間寝ていたらしい。
ふと目が覚めたが、改善された気がしない。
腕を持ち上げてみるが、上手く持ち上がらない気がする。
(まずい、このままでは…。一護に連絡すべきか…? いや、でも今はきっと遊子の子どもの様子を見ている時間のはず…。もう少し、待ってみよう。)
そう思いながら、ベッドに横たわっていた。
だんだん、重苦しい感覚が強くなる。



(一護に連絡したいけど…。遊子の子どもも調子が悪いのだ、私が呼び戻すようなことをしては…。帰るまで、何とか持ちこたえなければ…。)
朦朧とする意識の中、ルキアはそう考えてひたすら一護が帰って来るのを待っていた。
そのうち、意識がだんだん遠くなる。
ルキアは、ベッドの中で気を失っていた。



一方、遊子の子どもの調子も余りよさそうではなく、念のために受診した方がいいだろうと一護は判断した。
あいにく遊子の家では遊子の旦那が休日出勤だったため、一護が病院に付き添ってやった。
当番医は、時にかなり混むことがある。
その日も混雑が酷く、帰って来るまでにかなりの時間がかかった。
昼を回ってしまっていたので遊子が昼を食べるようにと誘った。
ルキアには昼を先に食べるよう連絡を入れておいたが、ルキアからの返信は無かった。



たまに連絡に気付かないこともあるルキアだが…。
昼を過ぎているとなると、さすがに携帯くらいは確認するだろう…
何となくルキアが気になって、一護は遊子の誘いを断るとそのまま帰宅したのだった。
帰って来た一護は、ルキアが迎えに出てこないのを不審に思った。
「ルキア…?」
リビングを見回しても、誰もいない。
「ルキアー、どこだ?」
家の中を探してみたけど、見当たらず…。



絶対いないだろうとは思いつつ、後は寝室しかないので念のためにとベッドに向かってみた。
すると、小さく布団が盛り上がっている。
(こんな時間から昼寝か…?)
「ルキア、こんな時間から寝てんじゃねえよ。」
布団をめくってみた一護は焦った。
ルキアの顔は青ざめていて、体に力が入っていないのが一目でわかった。



「おいっ、ルキア! ルキア!?」
その声に、答えはない。
(どうする、現世の病院…は連れて行けねえし、この症状が現世の病原菌のせいなのか、ソウル・ソサエティで何かあったからなのか、判断がつかねえ…。)
一護の頭の中には、浦原の言葉がよみがえっていた。
『死神でも、現世の病気にかかることはあります。むしろ、あっちの世界にはいないウィルスなんかにかかった場合、抵抗力がありませんから気を付けてください。』



こうなったら、両方の知識を持っていると思われる人物…、一心に頼むしかないだろう。
浦原は、あちらのことには詳しそうだが、現世の病原菌には詳しくないだろうから。
自分はその逆で、現世の病気ならわかっても、あっちの影響となるとよくわからない。
一護は、急いで一心に連絡をした。
「親父っ! ルキアの様子がおかしいんだ! 現世の病原菌か、あっちの影響か、俺じゃ判断がつかねえ。」
「わかった。診てみる。医療器具があったほうがいいかもしれねえから、こっちに連れて来れるか?」
「連れて行く。」



車を持って来て、ぐったりしたルキアを抱き上げると、後部座席に落ちないように乗せて、クロサキ医院へ急ぐ。
着くと、一心が待ち構えてくれていた。
「ルキアちゃんをベッドへ。」
脈拍、呼吸、心音。
いくつかチェックした一心は、出ている症状に反してそれらには影響が全く出ていないことに気付く。
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