黒崎夫婦の日常シリーズ

□◎今日は何の日?(4月14バージョン)
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今日は、一護は仕事でルキアは休み。
桜もかなり散り気味ではあるが、まだ見られることもあって、ルキアは花でも見に行こうと計画を立てていた。
一護と一緒ならもっと楽しいのだが、そうわがままも言っていられない。
仕事の休みが合うことは限られているのだから。
もちろん、ルキアは死神姿で出かけるので、人目につくこともない。
そのおかげで、絡まれるとか他の男に声をかけられるとかいった心配をしなくていいので、一護も許可を出したのだった。



ルキアは、ポカポカと気持ちのいい午後になって、家を出た。
そして、目的地まで瞬歩で移動する。
そこは、河原が一面桜並木になっているところだった。
桜自体が綺麗なのはもちろん、水の上を流れて行く桜の花びらも綺麗で。
ルキアは死神姿であるのをいいことに、川の上から桜を眺めたり高い所から桜を見降ろして楽しんだりした。
河原に寝転んで日向ぼっこも昼寝も楽しんだ。
その帰り。
何気なく駅前の賑やかな通りを歩いていたルキアは、あるものを見かけると、急に何かを思い立ったように瞬歩でその場を去った。



向かったのは、浦原商店。
「そんな急に言われても…。」
などとごねる店主に「ここは店だろう? 私は客だ。」と迫っていた。
「ご自分で買いに行かれたらいいじゃないですか〜。」
「私は現世では大っぴらに姿を見せられぬ身だ! 知っておるくせに…。でなければ貴様に頼んだりせぬわ。それに、タダでとは言わぬ。商品代に上乗せして心付けも支払う用意があるのだが…。」
「それを早く言って下さいよ。それなら考えないこともありません。では、1時間後に。」
「ああ、よろしく頼む。」
急に態度を変えた店主に、内心ニヤリとしながらルキアはその場をいったん去った。



1時間後に再び浦原商店に現れたルキアは、浦原に頼んだものを受け取って、約束通り商品代に買い出しの手間賃を渡して満足そうに去って行った。
さて、夜の黒崎家。
一護が帰って来ると、何やら柑橘類のいい匂いがする。
見れば、玄関にかごに乗せられたオレンジが飾られている。
(オレンジ…? ってか、何のために…?)
「ただいま〜、ルキア。」
リビングに入ると、キッチンに居たらしいルキアが迎えに出てきた。



「おかえり、一護。もう少しで夕餉の支度ができるぞ。」
「おう、さんきゅ。で、なんで玄関にオレンジ?」
「だって、今日は貴様の日なのだろう…?」
「は…?」
「何だ、貴様知らぬのか…?」
「だから、何を…。」
自分を見つめるルキアの視線は、なぜか目よりも少し上の方に向いているような…。
「花見の帰りに駅前を歩いていたら、張り紙が目に止まってな。」
(張り紙…、ああ、ポスターのことか…。)



「で、何が書いてあったんだ?」
「今日はオレンジデー、なのであろう? ほら、一護の日ではないか!」
「コラッ、ルキアッ! 俺はオレンジじゃねえ!」
(そのためにわざわざオレンジまで用意したのか…?)
呆れる一護は、あははは、と笑いこけるルキアを捕まえて引き寄せる。
「テメーなあ…。減らず口ばっか叩いてると、痛い目に遭うぜ?」
「いいのか? そんなことを言っても…。後悔するぞ?」
何やら意味ありげな言葉に、とりあえず様子見といったんルキアを解放した。



すると、ルキアは何事も無かったかのように食事をテーブルに並べ始めた。
「ほら、食べるぞ。」
「ああ、いただきます…。」
さっきのはなんだったんだ…?
どうも腑に落ちない一護だが、ルキアは普段どおりなのでとりあえず食事をする。
すると、食後にルキアがコーヒーを入れてくれ、自分用にはホットココアを用意している。
その後、テーブルには美味しそうなケーキが置かれた。



「美味そうだな、これ!」
「オレンジムースのチョコケーキ、だそうだ。」
何やら怪しげな発音に、どうやら自分で買ったのではなさそうなその言い方。
「お前どうやって買いに行ったんだよ?」
「浦原に探させたのだ。オレンジの入ったチョコケーキを買ってきてくれと頼んだら、これが届いた。」
「ってか、これもオレンジかよ。オレンジデー、だからか?」
「そうだ。オレンジデーというのは、オレンジやオレンジ色のものを愛する人に贈る日だ、とも張り紙に書いてあったのだ。だから…。」



ルキアは、さっきとは打って変わって恥ずかしそうに俯きながらそう告げた。
(そういうことかよ…。)
ルキアの行動に、思わずドキッとさせられた一護だった。
時々、ルキアは無自覚でとんでもないことをやってくれる…。
そのたびに驚かされつつ、でも喜ばされつつ。
一護は、ルキアと一緒になって良かった…と密かに思うのだった。



「わりいな、俺はそんな記念日があることを知らなくて…。何も用意してねえや。」
「いいのだ、私がしたかっただけだから。それに、私も張り紙を見なかったら知らなかったぞ?」
「そっか。じゃあ、そのかわりに、次の俺の休みには美味い白玉たくさん買って待っててやるから。」
「おお! それは楽しみだ!」
『第三の愛の記念日』とも言われるらしい、オレンジデー。
確かに、二人の愛は深まったのかもしれない…。



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