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□表裏一体
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「笹の葉さらさら 軒端に揺れる お星様きらきら 金銀砂子」
今年も、遊子が楽しそうに歌う声が聞こえて来た。
例年通り、今年もクロサキ医院に飾られた笹に、見本の願い事を黒崎家のみんなが書いてつるす時期がやって来た。
一護に逢いに来ていたルキアも、参加した。
病院に飾るための短冊には、去年と同じように表向きの願いが飾られている。
今年ルキアが書いたのは。
『チャッピーグッズの種類が増えますように』
だった。



去年は、一護とルキアはお互いの気持ちを記した短冊を交換した。
ルキアは、それを自室の引き出しの中に。
一護は、お気に入りの本の中に。
それぞれしまっている。
それを思い出したのか、ルキアがもう1枚短冊を持って来て一護に渡した。
去年一護が選んだ、紫色。
自分の、瞳の色の短冊だ。
そして、もう1枚オレンジ色の短冊を用意すると、いそいそと何か書き始めた。
『この先も、もう一つの世界でも、ずっと一緒にいられますように』



(俺にも書けってことだよな…、これは。)
ルキアの気持ちを察した一護は、神妙な顔をしつつ短冊に本心からの願い事を記した。
『これからも隣にいられますように』
去年と変わらず自分と共にあることを願ってくれるルキアの言葉が嬉しくて、一護も同じようなことを言葉を変えて書いた。



すると、ルキアが自分が書いた短冊を渡してきた。
「裏に、同じことを書いてくれ。」
そして、一護が書いた短冊を取り上げると、同じ内容の願いを紫色の短冊にも記した。
(どういう意味だ…?)
よくわからないながら、一護は言われた通りにする。
すると、ルキアはあらためて紫色の短冊を一護に渡し、オレンジ色の短冊を受け取った。



「去年と同じように、持ち帰るのだ!」
嬉しそうに短冊を見つめるルキアに、一護が問いかけた。
「それはいいんだけど…、なんで今年は両方に願いを書いたんだ?」
「私と一護のようだ、と思ってな。」
「これが…?」
「ああ。一護は男で人間で、私は女で死神だ。貴様はまるで太陽のように眩しくて、私はそんな明るさなど持ち合わせていない闇夜のようなものだ。全てが、表と裏のようなものだと思ってな。でも、そんな正反対の私達なのに、切っても切り離せない関係。そうであればいいな、と…。」



“表裏一体”
ルキアの言わんとする言葉が、一護にもわかったような気がした。
でも…。
ルキアの言葉の一部に、腹が立ったのも事実。
「バカじゃねえの?」
「なんだと、貴様!」
自分の考えを否定されたのだと思って、ルキアは声を荒げたが…。
一護は、わざとらしくため息をついて見せてから言った。



「それ以外はわかるけど、なんでお前が闇夜なんだよ。俺にとっては、お前は光そのものだ。確かに、主張するような光じゃねえんだけど、なんていうか…、困った時にそっと先を照らしてくれるような…。例えるなら、月の光…、か?」
「な、何を…。」
「まあ、俺が太陽ってのも買いかぶり過ぎなんだけど。もし、俺がお前にとっての太陽になれるんなら…。お前は、俺にとって闇の中で先を照らしてくれる月だな。暗い中で、俺が行くべき道を示してくれる。無いと、すげえ困る。」



ストレートすぎる一護の言葉に、ルキアの頬は瞬時に紅く染まった。
ルキアを優しく引き寄せて、腕に閉じ込める。
短冊に記した願いは、ただ願うだけのつもりはない。
そうなるように、もちろんできる限りの努力をして見せる…。
二人のそんな決意が込められた短冊は、去年の短冊と並べて大切にしまわれた。

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