長編

□◎【完結】いつか隣に立つ日のために
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仲間を全て失った日…。
恋次と私は、約束した。
死神になろう、と。
生きるため。
ただ、そのためだった。
ずっと、恋次とは家族の距離のままでいられると思っていた。
だから、私は不安はありながらも霊術院での生活を頑張ろうと思っていた。
でも…。
当面命の心配をしなくてよくなった私には、別の問題が立ちはだかった。
考えてみれば、贅沢なことなのだ。
生きられる、それだけでいいはずなのに。
なぜ、このようなことを考えてしまうのだろうな。
つくづく、我がままにできているのだ、私というものは。



気になっていること。
それは、どんどん離れていく、私と恋次との距離。
私は、心のどこかでいつも恋次のことを気にかけていると言うのに…。
あの思い切りのいい性格で、すでに仲の良い学友がいるらしい。
常に行動を共にできる、新しい仲間が…。
あやつには、私がいなくても大丈夫なのだ。
それを、見せつけられる毎日だった。
クラスが違う私達は、学内で会うことすらあまりない。
廊下ですれ違うのがせいぜいで、そんな時も恋次から一言かけられればいい方で。
学友と話しこんでいる時は、視線をチラッと走らせただけで去って行くことすらあった。



そんな私達が久しぶりに会話を交わしたのは、入学してから1ヶ月半が過ぎた頃だった。
昼休み。
春の陽気の中、心地が良いので外で昼食を取っていた時のことだった。
なんて、それは言い訳だが。
温かいので、外で昼食を取っている者も多く、恋次はいつも一緒に歩いている二人と共にいた。
「お前、なんでこんなところで一人でいるんだよ。」
「別に意味はないが…。」
ただ、教室に居づらいのだ。
流魂街出身の私に対する風当たりは、とても強い。
それすらものともせず、すでに学友を作っている恋次が、私にはまぶしかった。



「おい、ルキア。お前、まーだ友達すら作れねえとか言うんじゃねえだろうな。いいかげん、お前も頑張らねえとな。」
「そんなわけ…!」
あるわ。
恋次のたわけ!
どうせ、貴様は気づいてすらくれぬだろうな。
私が、どんな思いで今貴様を見ているのか…。
霊術院に入った時から、私と恋次の間には大きな壁ができてしまった。
あやつは特進クラス、将来を嘱望される者が集まるクラスだ。
それに対して、私は一般のクラス。
ただでさえ実力差があるうえに、特進クラスはどんどん実習やら鍛錬やらを積み重ねて強くなっていく。
埋められるわけが、ないではないか…。
追いつかねば、そう思う気持ちと、それは無理なのではないかという気持ちがごちゃまぜになって、苦しい。



「そろそろ行かないと、阿散井くん。」
「ああ、そうだった。じゃーな、ルキア。」
恋次は、学友と共に私に背を向けた。
私にできるのは、ただその背中を見送ることだけだった。
ほら、もう貴様は私のことなど見ていない。
貴様の目に映るのは。
貴様の隣に立つのは。
新しくできた、学友なのだ。
はあ、とため息をつく。
すると、今まで見かけたこともない、特徴的な男から急に声を掛けられたのだった。
オレンジの頭の、男。
恋次も赤い頭でかなり目立つが、この男もまたかなり目立っていた。



「こんないい天気なのに、ため息なんてもったいねえな。なんかあったのか?」
「うるさい。」
噛みつくように答えたのに、この男は意に介する様子もなかった。
「お前、阿散井の幼馴染ってヤツだろ?」
「なんだ、もうそんなことが知れ渡っているのか。がっかりしたか? 特進クラスに進むほどの男の幼馴染が、私だと知って。」
何だ、それを確認したくて寄って来ただけか。
まあ、私は恋次のおまけのようなものだからな。
それも仕方がないのか…。
でも、その男は違うと言う。



「んなの、関係ねえよ。ってか、俺はそんなことで声をかけたんじゃねえし。確かに、最初は阿散井の幼馴染っていうから、どんなヤツかと思って見てたんだけどさ。その時は、ちょうどお前らのクラスが鬼道の演習をやってる時で。俺、鬼道がすげえ苦手なんだよ。それなのに、お前がすごかったから、思わず見入ってしまってさ。」
「は…? 何かの間違いであろう? 恋次と話したことがあるのなら、貴様だって1組のはずだろうが。そんな男が、私の鬼道を見てすごいなどと…。からかうのもいいかげんにしてくれ。」
「からかってねえよ。本気で思ってるし、俺も困ってんだ。それに、阿散井だって鬼道はすげえ苦手だろ?」
「まあ、確かにそうらしいが…。」
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