MAGI

□第4夜
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書庫でたまたま見つけた本が面白く没頭してしまい、気がつけば日付を跨ごうとしていた。紅炎はまだ帰ってきていない。それはそうだ。紅炎は煌帝国第一皇子である。軍議を紅明さんに任せているとはいえ、やらなくてはならないことは山のようにある。帰ってこないことだって度々あるくらいだから。


キリのいいところだったので本を閉じて寝ようと思ったが、再び本を開いて読むことにした。





極力、夫が帰ってくるのを待とうと決めている。それが妻の役目と勝手に思っているから。まぁ、たまに睡魔に勝てず寝てしまうことも無きにしも非ずだが……。そのことを彼も知っているので、遅くなる時は事前に言ってくれる。見た目に反して優しい人なのよね。それは結婚してから痛いほどわかった。私がジュダルにここに連れてこられたその日に、結婚を申し立てられた。周りのものは大層驚いていたが、私の方が驚いたわ。だって、いきなり結婚だなんて……それに、そのときにいた側室全員を捨てるとまで言い出すんだもの。でも私は、それを断る理由はなかった。だって彼、練紅炎は、私が選んだ王の器なのだから。マギとして、妻として、お側に仕えようと決めた。そういうことだから、最初なんて彼がどういう人なのか、何もかも手探り状態だった。色々彼のことを知るのは大変だったけど、彼も私のことを知るのには苦労したみたいだから、今となってみれば楽しかったなって思う。





そんなことを考えていると部屋の扉が開き、夜の寒い空気が私の肌を刺した。



「お帰りなさい。お仕事、お疲れ様です。」




そこには、寝間着に羽織を羽織った状態の紅炎がいた。きっと、湯船に浸かってこられたのだろう。


「あぁ。………まだ起きていたのか」



「えぇ。この本が面白くてつい時間を忘れて読んでいました。」



「ふっ、お前らしいな」

私が読んでいる本を覗き、懐かしいなとポツリ呟いた。




寝ると言うので私は紅炎の着ている羽織を脱がせた。そして、灯を消し二人が並んでも余裕のあるベットに入る。入るなり紅炎は私を引き寄せ、その頑丈な腕で私を包み込む。彼の胸板が私の頬にあたる。


「お食事はちゃんと摂りましたか?」


「あぁ」


「そうですか。」


紅炎も紅明さん同様、仕事に没頭すると食事を摂ることを後回しにする人なので安心した。


「おやすみなさい」


「あぁ」


寝る前に必ず額にキスをしてくれる。
私は嬉しさと恥ずかしさとで紅炎の胸に顔を埋める。

ふっ、という紅炎の薄笑い声が聞こえた。






私はこの瞬間がとても好き

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