MAGI

□第5夜
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紅炎が帰ってこない。

いや、帰ってこないことは幾度となくあったけど、今日で5日が過ぎようとしている。連続では今ままでで初めて。そんなに大事な仕事が続いているのだろうか………。

仕事内容は私に何一つ知らされていない。ただマギとして、戦いには参戦してもらうが、それ以外のことに関しては介入するなということである。だから、煌帝国が何を企んでいるかなんて知らない。………まったく、勝って極まりない。
だから、実の所私が紅炎と会うのは朝と夜、たまに回廊で会うくらいなのだ。






1人で寝るのは寂しい………でも、それより紅炎の事が心配。ちゃんと食事を摂っているのか、寝ているのか。あの人はしっかりしているから紅明さんのようにはならないと思うが、それでも心配になる。



明日、こっそり見に行ってみようかな。
そう考えながら私は眠りについた。












次の日の朝、紅炎はまだ帰っていない。
一人で朝食を済ませ、さっそく会議室へと向かう。




私は魔法で自分の姿と気配を消し、会議室の窓から中を覗いている。案の定会議室には数人の人達がおり、忙しない話し声が響いている。そして巨大な赤い毛玉も健在だ。髪の毛ってあんなに膨張するのっていうくらいに巨大化していた。逆に感心します紅明さん。

そして一番大きな椅子には、第一皇子らしい佇まいをしている紅炎の姿があった。とりあえず見た目に変化はないから安心………………と思ったのもつかの間。




「………えっ」




紅炎の隣には紅炎に食事を運んでいる白瑛の姿があった。そして紅炎の隣に座り、白瑛も一緒に食事を始めた。何の話をしているのかはわこらないが、なんか楽しそう。その光景はいかにも仲睦まじい夫婦という感じだった。




わかってる。白瑛は煌帝国第一皇女。軍議に参加するのは当然のことである。そしてみんな同様、徹夜で軍議にでているのだろう。わかってる。これは仕方の無いことだって。わかってるわかってる。



……………でも、……ずるい。



私は紅炎と5日ほど会っていない………妻だというのに。でもそれは軍議に参加出来ないのだからしょうがない。……この5日間、ああして共に食事をしていたのだろうか。女官を介さず白瑛が紅炎のために食事を出していたのだろうか……。…………どうして女官ではなく白瑛が??私のときでさえも食事の準備は女官がしていたのに。
二人の間に何も無いことはわかっているが、疑ってしまう自分がいる。白瑛はただ、自分の義兄の事が心配なのだろう。それに、私より紅炎のことを知っている。


情けない………。こんな感情を持っている自分が、夫を部屋で待つことしか出来ない自分が。


涙が自然と出てくる。いろんな感情が溢れ出てきて止められない。
こんなことになるなら、見にこなきゃよかった。なんで、見に来てしまったんだろう。




突然、後ろにだれかがいるのに気づいた。姿を見えなくしているのに私のことがわかるのは一人しかいない。






「………勝手に見ないでよね。」

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