MAGI

□第7夜
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その後ジュダルと別れた後、私は部屋に戻ろうと回廊を歩いていた。すると後ろから、明るい声が聞こえた。


「花姉!!!」



「紅覇!」


声のする方に振り向くと第三皇子である練紅覇がいた。


「どうしたの?こんなところに。」


「んんー??花姉の部屋に行こうかなーって思っててさぁ」

「えっ?どうして?」
何か大事な用事でもあるのだろうか…。


「最近炎兄と会ってないんでしょ?寂しくないの?」

「…………」

いきなり紅炎と会ってないんでしょと言われて驚きのあまりなんと返していいかわからなくて黙ってしまった。しかも、痛いとこついてくるし…。


「炎兄になんか思ってることあるなら素直に言った方がいいよー。炎兄、勘はいいけどたまに鈍いところあるしぃ。 じゃあね、それだけ言いたかったんだ」


紅覇はそう一方的に話すと、元来た場所を戻っていった。

なんか今日は私の心の中を事細かく見透かされているような気が………。煌帝国の人達は末恐ろしい。それとも、私がわかりやすいのだろうか。


「あぁ!! 忘れてた」


「!!!」


回廊の角を曲がろうとしていた紅覇が大きな声で言うものだからビクッとなってしまった。


「炎兄もね、花姉に会えなくて寂しそうにしてたよー。あと、今日は帰ってくると思うよ」


そう言い残して紅覇は去っていった。






……………はっ?紅炎が寂しそうだったって?
私は思いもかけない紅覇の言葉にその場に固まってしまった。







(炎兄になんか思ってることあるなら素直に言った方がいいよー。炎兄、勘はいいけどたまに鈍いところあるしぃ)



私は部屋に戻り、さっき紅覇が言っていた言葉を思い出していた。



素直に言うか………。











夜。私は早めに寝床に入った。決して、眠い訳では無い。そのまま、私は壁の方を向いて紅炎が帰ってくるのを待っていた。


ガチャっと扉の開く音がした。そしてそれと同時に、魔法が発動し部屋が光に包まれた。



透視魔法。5日ほど一人で寝て寂しかったこと、今日あった出来事、私の感情、ジュダルとの会話………。それを魔法で見せることにした。私は素直に面と向かってなんて言えない。だから魔法に託す。何やってるんだっていわれそうだけど、別に構わない。そんな心とは裏腹に心臓は激しく脈を打っている。







しばらくしてから光が消え、足音が近づいてくる。




「花」

紅炎がベットに座り私の名前を呼ぶ。

本当はこのまま寝た振りをしたかったが、またも心とは裏腹に身体が動き、私は紅炎の腰に抱きついていた。


「何やってんだ」



やっぱり言われた。私は何も返さなかった。





少しの沈黙のあと、悪かった。紅炎は小さな声で、でもハッキリとそう言った。


「!!!!」


紅炎が謝罪したという事実に驚き、腰に埋めていた顔をあげた。最近驚くことが多いな……。


「なんだ」


「紅炎でも、謝ることあるんだなと思いまして……」



顔を上げたことにより紅炎と目が合ってしまった。紅炎はじっとわたしの目を見てくる。………圧がすごいんですけど。



「敬語は使うな」

紅炎は目を見つめたままそうおっしゃった。



「………なんで、ですか」

圧に押されて上手く話せない。


「マギなら使う必要はないだろ。ジュダルも最初から使ってなどいないからな。」


もっとマギらしく生きてみろ




私はこの言葉で悟った。


あぁ、この人は私を試しているのだ。
夫として、皇子として。私のマギとしての実力をもっと知りたい、見たいのだ。






「わかった。なら、今後は手加減しないから。妻としても、マギとしても。」

少しの沈黙のあと、私も覚悟を決めて紅炎を強く見つめそう言った。




「楽しみだ」



紅炎の不敵な笑みが両目いっぱいに映る。月の光に照らされて一層不気味だ。防壁魔法が出てしまいそうになるくらいに。
私は危険な人を夫に持ってしまったと改めて後悔したのだった。



この笑みが怖いから面と向かってなんて言えないのだ。魔法が使えて良かった。




やはり、この人は王の器にふさわしい













その後、紅炎が私に誤ったことが意外すぎると笑いながら言ったらバカにしてるのかと小突きされた。

小突きとは思えないほどの強烈な痛さに涙が出てきて再度紅炎の腰に顔を埋めた。

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