ハイキュー!!

□第8話
2ページ/2ページ

私が校門の前まで行くと、何やら徹がしゃべっているのが確認できる。




「花さん……」



飛雄はこっちへ向かってくる人物が私だとわかったのだろう。ボソッと私の名前を呼んだ。



その言葉を聞いた徹は急いで私の方を向き、罰の悪そうな表情を浮かべる。




「げっ………花」




『体育館にいないと思ったらこんなところで何をしてるのよ。……岩ちゃんがカンカンに怒ってたよ』




私がそういうと徹は、さっきにも増してヤバいという表情を浮かべたが、私に歩み寄り、ゆっくり話しなよと耳元で囁き足早に去っていった。



わかってるんだか、わかってないんだか…………でも、ありがとう。




なんだかんだ私のことをわかってくれている幼馴染に感謝した。













『ごめんね。なんかあいつ、変なこと言ってなかった?』



私の問い掛けに、ほぼ全員が苦笑いを浮かべた。




………後で何を言ったのか聞なきゃいけないな。




そんなことを考えながら、私は飛雄のことを見た。




『久しぶりだね』



「ウッス」




『………安心したよ』





私のこの言葉に、飛雄は少し驚いた様子だった。




他の人達は何のことだかさっぱり分からず、ただ私たちの会話を黙って聞いている。







『実はさ………見に行ったんだよ。あんたが中3のときのあの試合。』




「……………」




飛雄はあのときのことを思い出したのか、少し苦しい表情を浮かべた。






『ひどいよね、「コート上の王様」なんてさ。………でも、あのときのあんたには、ぴったりな言葉だったと思うよ。』




飛雄は下を向きながら、黙って私の言葉を聞いていた。






『私が卒業するまでに、もっと色々なこと教えてあげればよかったな…………ってその試合を見てすごく後悔した。』



私はあの時のことを思い出しながら話を続けた。




『その時思ったんだ。きっと飛雄は、青城には来ないだろうなって。金田一や国見ちゃんが青城に行くっていうことは分かってただろうし。それに………徹がいるしさ。』



徹、という言葉に飛雄は少し反応したようだった。



『でもそうなると、飛雄はどこに入学するんだろうなぁって考えてさ。きっと白鳥沢あたりから推薦でも来てるんだろうなーって思ったけど、飛雄の学力じゃ無理だなーとか色々考えて……………金田一から烏野って聞いたときはびっくりしたよ』



飛雄は無言のまま話を聞いている。






『でもね。今日、あんたの試合しているところを見て、烏野に入学してよかったなぁって思ったよ。……きっとあんたには烏野が合ってる。』




私の今の言葉に、飛雄はやっと顔を上げて私の方を見た。



『それに、良いパートナーと出会えたようだしね』




私は、さっきからソワソワしながら私の会話を聞いていた、あの小さな彼に視線を向けて言った。




「こいつがっスか」





私の言葉を聞いた途端、さっきの態度とは裏腹に、飛雄は怪訝そうな顔つきで言った。




『そうよ。あの速攻、とてもすごかった。なかなかできるものじゃないよ』




そういうと飛雄は、少し嬉しそうな表情になった。



すると小さな彼が、飛雄を無視して私の前に出てきた。





「あの!女子日本代表の椿花さんですよね?俺、日向翔陽っていいます!うわぁ………間近で会えるなんて嬉しいなぁ!」




日向翔陽と名乗った小さな彼は、私に会えた嬉しさを抑えきれないのか、その場でピョンピョンと跳ねていた。



小学生みたい……………





「落ち着け、日向」


日向くんは、左目の下に泣きぼくろがあって、いかにも爽やかそうな人によって引きずられていった。 








なんか個性的なチームだなぁ……













いつの間にか、体育館を抜け出してから時間が経ってることに気づいた。







『長話しちゃってごめんなさい。今日は練習試合楽しかった。途中からしか見れなかったけど。また機会があったらよろしくね』




私のその言葉を合図に、キャプテンが今日の試合のお礼を言い、各自バスの中に入っていった。






『飛雄』




私はバスに入ろうとしていた飛雄に声を掛けた。







『私は青城の者だから、中学時代のように色々と教えることはできないけど………何かあったら私に連絡して。相談くらいなら皆に内緒で乗ってあげるから。…………昔みたいに少しは頼ってちょうだい。あぁ、私のメールアドレスならチームの誰かが知ってるから聞いてね』



私は飛雄の後ろでバスに乗るのを待っていたキャプテンに、目配せをしながら言った。




「ウッス」



飛雄はそれだけ言うと、バスの中に入っていった。





私は、飛雄が少し笑っていたように思えた。






『それから、リベロとエースは用意しておかないと、公式戦だったら勝つの難しいからね』




私はキャプテンにそうボソッと告げると、及川にも言われたと苦笑いされた。










それから私はバスが校舎を出るのを見送ってから、皆が待っているであろう体育館へと戻った。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ