長編小説

□第1話
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「2日前から飲まず食わずで逃げ続けてるんやで、もう走れへん」


昨日の昼間に騒動が起こり、夜も寝ずに逃げ続け、そろそろ疲労が溜まっている頃だった。


「あ、向こうにコンビニがある!」


さゆりんが指差した方を向くと少し先にコンビニがあるのがわかった。


「あの化け物も全然おらんし、行くなら今のうちやない?」


七瀬の提案に2人とも頷き、慎重にコンビニまで足を進めた。

そっと中を覗いてみると金髪と茶髪の男が2人、食べ物を物色しているのが見えた。


「あの人たち、化け物やないよね…」

「たぶん」


開けっ放しのまま止まっている自動ドアの前で戸惑っていると金髪の方が私たちに気づいた。


「お前ら、まさかあの化け物じゃねぇだろうな」

「おい待て、俺こいつら知ってるぜ。乃木坂の白石と西野と松村だろ」


茶髪の方がニヤニヤしながら近寄ってくる。


「なあ、お前らも食いもん欲しいんだろ?じゃあ交換条件だ」


男は七瀬のすぐ前まで来て「ヤらせろ」と言った。

七瀬は困惑していた。もちろんさゆりんも。

ただ、私だけは七瀬をそんな目で見ていたことに頭にきていた。


「ふざけないで!」

「あぁ?別に写真集バカ売れの白石さんでもいいぜ?」

「そもそも、あなたたちのものだけじゃないでしょ!」

「うるせぇな、お前らが困ってるから助けてやろうとしてるだけだろ?」

「まいやん!落ち着いて!」

「もうええよ!逃げよう!」

「チッ、待てよ!」


さゆりんと七瀬のおかげでなんとか欲に塗れた手から逃れることができた。


「ごめん…何とかしてでも生きなきゃいけないのに…」

「ええんやで、あんなやつらの言いなりにはなりたなかったし」

「ななも…まいやんが守ってくれて嬉しかったで?」

「ありがとう。これからどうしよっか」

「…あっちにあるショッピングモール行かへん?食べ物だけじゃなくて、他にもいろんなものあるし」

「そうだね、行こう」



第1話 終
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