長編小説

□第2話
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ショッピングモールに着く頃には日も傾き始めていた。


「なるべく早く事済ませんと何も見えなくなりそうやな…」


今の東京は、ところどころ火災が発生しているだけで他の光源は、そもそも電気も通っていない。もしもこんな状況で夜を迎えたら朝を迎えられる気がしない。


「まずはアウトドアのコーナーに行こう」


私が前を歩き、2人は後ろを警戒しながらついてくる。

中は薄暗く、しかし、あの化け物の姿は一切見当たらなかった。

私たちの足音と呼吸だけ、時々、外からの爆発音や悲鳴が聞こえてくる。


「何があっても声を出さないでね」


2人に耳打ちすると強く頷いた。

不気味な静寂に包まれたまま、化け物の姿を一回も見ることなく目的地へと辿り着いた。

その時だった。


「危ない!」


七瀬がさゆりんを私の方に突き飛ばし、間一髪で化け物から回避した。

しかし、そのせいで私とさゆりん、七瀬との間にあの化け物という構図になってしまった。

それも最悪なことに、あの化け物は七瀬の方を向いている。


「逃げて!」


七瀬が叫んだ。

そんなことできるわけない。七瀬にそう言おうとしたとき、さゆりんに口を押さえられた。

必死に七瀬の方に向かおうとしてる体を、さゆりんは私以上の力で引き戻した。

そして、七瀬は化け物に標的にされたままどこかへ逃げ出し、また静寂が戻った。


「なんで…」

「仕方ないやろ」

「だからって!」

「しっ。またいつあいつらが現れるかわからへん。早よ行くで」


さゆりんは至って冷静だった。コンビニで私が感情的になってしまったこともあるし、ここは引くしかなかった。

それから、リュック、懐中電灯、サバイバルナイフ…必要と思われるものと、併設されているスーパーで食料を入手した。

辺りはもう真っ暗で、懐中電灯の明かりだけが頼りだった。

もう用はないとスーパーを出ようとするさゆりんを引き止めた。


「さゆりん、私七瀬を探したい」

「…うちも、やっぱり見捨てられへん」


こうして、再び闇の中に足を進めた。



第2話 終
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