ただそこに漂いたかった

□有言実行/違和感
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ちゃんと朝の学習5分前には教室に入れるように起き、お弁当と財布もしっかり持参し、何も問題はないだろう。と思って登校したのだが。

…一つ、忘れていた。

昨日私はお昼休みの後、教室に戻るのが面倒でそのまま家に帰った。つまり、教科書類の入った鞄は学校に置きっぱなしだったのだ。

普通なら問題ない。だがしかし。忘れてはいけない。私はいじめられていることを。

『………』

…Where is my bag.

机の横に掛けていた筈の鞄が姿を消していた。…チラリ、とクラスメイトを伺えばばつが悪そうに顔を反らした。

はぁあああ。

探すか、今から?折角保険医に言われた通りに遅れないようにしてきたと言うのに。

…これじゃあまた遅れることになりそうだな。

早くも帰りたくなった心を優しく撫でて納める。


さて、どこから探そうか。

自分のロッカーを開けてみるが、まぁ無かった。

…いじめの定番と言えば。
どうせ注目されているのだから恥じることはない。

掃除用具入を開けてみる。その音にクラスメイトが肩をビクリと震わせたのは少し面白い。あ、筆箱はっけーん。

ご丁寧にバケツの中に入っていた筆箱を拾い上げ、机の上に置く。あ、ペンキまだ落としてないんだった。

後でやろうと次はゴミ箱の中を覗く。

…………うん。教科書類が入ってるね。見えた名前は私だ。教科書は資源ごみだろうに、て違う違う。

取り出すか、迷う。
元々あったゴミの上に捨てられた教科書。…正直触りたくはないな。高校は中学とは違いお菓子やらジュースやらが許されている。教科書の奥に見えたパックのリンゴジュース……教科書に変な汁が染みてそうである。

『…………』

残念ながらいじめ慣れていない私はゴミ箱に捨てられているのが私の教科書という実感がなかった。愛着もない。掘り出すのはなんか、こう…まぁプライドのようなものが邪魔をする。

なら、いいか。

後で本屋で買おう。無駄にお金はある。…私が稼いだ訳ではないが、紛れもなく私が稼いだものなのだから。資源を大切に?あっはっは。ここは漫画の世界さ。

…あとは鞄か…。

ここは私立校らしい。なら鞄は指定のもののはず。値が張る…は、いいとして、そこら辺で買えるものではない。
こればかりは探さないとだめか…。

そう思っていた矢先にチャイム。

朝の学習はいつの間にか終わっており、HLが始まろうとしていた。仕方ないので私は席に着いた。

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