ただそこに漂いたかった

□子供は元気
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「あー!こないだのお姉さんだぁ!」

そんな声が聞こえ、背後からパタパタと歩幅の狭い足音が数人分。

子供…4、5人といったところか。

全く子供は元気だなぁ。

今日も今日とて用のない私は町探検。宛もなくブラブラしていた。ここら辺の地理は頭に入れておきたいからな。

パタパタとした足音が近づき私の横を通り過ぎる。やはり小さな子供だった。その子供は私の目の前で止まった。そこに止まられたら私も止まざるおえない。足を止めた。そしてカチューシャの女の子に指を指される。

「やっぱりそうだ!!」
『…?』
「いやー、ねーちゃんすごかったよな!!」
『………え?』

もしかして、お姉さんって私のことなのか。

『えっと…一体何の用かな……ってリトル!!』

3人の子供達の一番後ろに保護者のように立っているのはリトル。もといコナンくん。だとするなら、この目の前の3人は彼の友人だろうか。

「りとる?」
『後ろにいるコナンくんのことだよ』
「え!?コナンくん知り合いなの!?」
「う、うん。ちょっとね!」

一瞬めんどくさそうな目線を送られた気がするが、仕方ないだろう。私だって面倒なのだから。私の場合、知らない人と話すのは神経を浪費する行為。知り合いはもっとだが。

だが、 完全に白 だと分かっているリトルは別。それにリトルと会ったのはあの夜が本当に初めて。それは確実。
つまり、私が何かボロを出したところで最も安全な人物。それには蘭ちゃんも入っている。

『で、君たち私に何か?』
「…おかしたくさんとってた人ってお姉さんだよね!?」
『え!?ああ、!』

あ れ か 。
どうやらこの子たちはあのときあの場に居たらしい。え、もう掘り返さないで欲しいんだけど。

「あのね!おかしありがとう!」
「うまかったぜ!」
「僕もです!ありがとうございます!」
『……い、いえ。お構い無く』

3人の子供が代わる代わる私に礼を言う。リトルはあの場に居なかったのか不思議そうにこの光景を見ていた。

「お前ら、白お姉さんと知り合いなのか?」
「あ!そっか、コナンくんは居なかったんだよね!こないだゲームセンターに人が集まってたから寄ってみたんだけど」
『あああああー!』

突然の大声にぱっと子供達がこちらに向く。

『その話は、止めよう。過去は振り返らないものだよ』
「…白お姉さんなにしたの?」
『お願いだからそんな怪しげな目でこちらを見ないで下さい』

それに明らかに ま、大したことじゃねーだろ という内心出てるからね顔に。

『……っと、すみません』
「………」

なんて話していたら人とぶつかってしまった。どちらかというとこんな大所帯で歩いているというのに、わざわざ真ん中を突っ切ろうとしたこの男性が悪いのだが。

「…なんだよあいつ、はじっこ通ればいいのによ!」
『まぁ、こちらも広がって歩いてるからなぁ。文句はいえないさ。……と、君たち。私用事を思い出したから失礼するね』
「え?」

驚く子供達を他所に私はくるりと身体を反転させ、来た道を戻る。

そして路地裏へと入る。

『お兄さん』

直ぐ側にいた人の肩を私は掴む。先程私にぶつかった男性だ。

『財布。返して』
「…あぁ!?」
『貴方とぶつかる前まではあった財布がなくなったんです』

そう、財布が無くなっていたのだ。
私は財布を常に肌に感触が伝わるように持っている。しかし、この男性とぶつかった後急に感触が無くなった。十中八九この男性が盗んだのだろう。

財布の中には家の鍵であるカードも入っている。それは絶対に回収しなければならない。

「っは!どっかで落としたんじゃねーの?」
『それはあり得ない。私の周りには子供達がいたので私が落としたら気づくかと。それに、貴方にぶつかる直前まで財布はあったのは確認していたので』
「っ俺は知らねーよ!!…女でも言いがかりつけるっつーなら容赦しね」
『そーですかそーですか。そう出てくるのならば正当防衛で』
「あ……?」

どうしてもしらを切りたいらしい。なら仕方ない。
良い感じに転がっていたバットを拾っていて良かった。

_ガッ と相手の首をバットで殴る。といっても軽く、だ。首には大切な血管が数多く通っている。おもいっきりやったら流石に危ない。

目を白黒させてよろめく男の背中を蹴り、地面に伏せさせる。そして男の腕を後ろに回し、身動きを封じる。思ったよりも力はいらない。テコの原理というやつか。

……ふぅ。

意外と動けるな、私。…割りと冗談半分でやったのだが。体が意思と同時に動く。

『さて、財布はっと……』

ポケットを探ればお目当てのもの。私の下の男は悔しげにこちらを睨んでいるが、気にしない。というか、悪いのはそっちだぞ。

『悪いことをするには相手を見極めた方がいいかと』
「…ッチ」

一言いい、男を解放する。やり返してくるかと思ったら以外にも舌打ちだけして走り去る男。私が通報しないのを見てこれ以上事を荒立てたく無かったのだろうか。
なんにせよ、それは私も同じ。

『…………ん?』
「ひっ……!」

あれに見えるはさっきの子供達。…私のあと、つけてたのか。

『…………』
「ごめんなさいごめんなさい!!なんでもしますから!!僕たちたまたま覗いちゃっただけで!!」
『いやそこまで怯えなくても』

そばかす少年があわあわと口を開いて怯える。子供には刺激が強かったんだろうか。血は出さないように気を付けていたのだが。

怯えるそばかす少年の前にずいっと出てくる二人。

「お姉さんすごいね!!」
「そうだぜ!あんなこわそーな兄ちゃんやっつけちゃうなんて!!」
『君たち二人は逆なの…』

カチューシャ女子とおにぎり少年は目を輝かせてこちらを見ていた。大したことはしてない。ただ、財布を返してもらっただけだが。

リトルはと言うと。

「……お姉さんって何者?」

鋭い眼光。どこかジンの物と似ていた。ただ、ジンの刃物のような綺麗さではなく、透き通る海のような綺麗さ。

『何者って、帝丹高校3年A組の結城白19歳ですが』
「それは知ってる!」
『あれ?知ってるの?』
「ら、蘭姉ちゃんから聞いた!そうじゃなくて」
「ねぇねぇ!お姉さんにも手伝ってもらおうよ!」
『手伝う?』

リトルの言葉に割って入ってきたカチューシャ女子。私はそれに聞き返す。リトルがなんともいえない顔をしているが、カチューシャ女子の方が気になったのだから仕方ない。

私は暇人なのだ。手伝う、という魅力的な言葉を無視できる筈はない。

「これ!」
『紙?』

カチューシャ女子が渡してきたのは細長い紙。どうやら縦に見るのが正しいのか縦で渡される。見ると…図形。数は8個。月やら魚やら分かるものもあるが、何の形だか分からないものもある。

『これは何?』
「宝の地図!」

…宝の、地図?

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