ジーザス

□私は求めていた
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「ぼうやも隣町までいくの?」
「そうさ!」
「まぁ、あちらの方はぼうやのお姉さん?」
「ううん!ハルおねいさんは僕の旅の仲間だよ!」

この馬車には運転手を抜いて計5名乗っている。アラジン、私。小さい女の子とその母親。と男。

この馬車以外にも同じく人や荷物を乗せた馬車が前方に続いている。

「これ…動くな子供よ…ホコリが散る」

ムシャムシャと美味しそうな音を立てながら林檎を食べている男。お腹は出ており清潔感もない。食べ方も汚い。不愉快極まりない男だ。

男の後ろには大量の樽が積まれている。余程大事な荷らしい。…へぇ…ブドウ酒か。運転手の少年が男に媚びへつらうように笑いながら言っていた。…どうやら偉そうな口調は間違いではないらしい。

アラジンは男の林檎を凝視している。そして静かに手を伸ばした。…懲りないなぁこの子も。

しかし、私が咎める前に男に怒られていた。そしてその男に賛同するように運転手の少年も合いの手を入れる。

「アラジン。町に着いたら果物みてみよう」
「うん…」

すっかり意気消沈してしまったアラジンを呼ぶ。アラジンは私の横にちょこんと座った。ライラさんたちから頂いた食べ物に果物はない。…町に着いてからとは言ったけどお金もないんだよな。そもそもここの通貨がどんなものかもしらない。

「…アラジン?」

アラジンは何故かじっと男を見ていた。てっきり羨ましいのだと思ったのだがどうにも様子が違う。

不思議に思っていると、アラジンは立ち上がりとことこ男へと歩いていく。
そして、がしっ、と男の胸を掴んだ。

「………アラジンくん?」

アラジンは男の肥えた体型によってもたらされた胸を両手で掴み揉んでいる。その光景にアラジンがサアサさんの胸に顔を埋めていたことを思い出す。…少年だからと片付けていいのだろうか。大きな胸ならなんでもいいんだろうか。

「おじさん……おじさんは…ふしぎだね。どうして男の人なのに…おっぱいがついているんだい?」

アラジンの無邪気な疑問。
この後怒号が飛び交ったのは当然だといえるだろう。








休憩、と称して馬車が止まる。乗っていた人も一同馬車を降りる。そして私とアラジンも降りると、運転手の少年がアラジンを掴みどこかへ連れていってしまった。…運転手の形相からして大体予想はつく。放ってもおけないので後をついていく。

「今度ナメたマネしたらぶっ殺すぞ!」
「……」

案の定少年はアラジンを掴んで物騒なことを言っていた。

「ったく…こんなガキのせいで俺の人生設計崩されてたまるかよ…」
「人生設計?」
「俺は、借金返して"迷宮(ダンジョン)攻略"で一発当てるんだよ」
「ダンジョン?」

なにそのRPGみたいな話。思わず聞き返すと少年の目がこちらを見てはっとした。どうやら私が居たことに気づいていなかったらしい。

「!あ、なたはこいつと旅をしてるっていう…」

運転手なのだから馬車での話は聞こえていただろう。

「すみません。アラジンが気になって。盗み聞きする気は無かったんです」

軽く詫びを入れ、紫外線を防ぐために被っていたフードを取る。…熱気が肌にじりじりと来る。

「それで迷宮(ダンジョン)ってなんだい?」

アラジンが話を続ける。…しかし、運転手は私を見たまま動かない。

「……あの?」
「!え、?ああ!!迷宮ってのは…」

はっとすると少年は流暢な喋りに戻っていた。

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