灰色のルフ

□アリババ
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おばあさんの家を離れ暫く歩くと都市が見えた。

…あそこは。

リュックの中から地図を取り出す。

砂漠にある都市でここにあるのは…

『オアシス都市チーシャン…』

指の先にはそう示されていた。


[第一夜 アリババ]
______
__

『賑やかだなぁ』

商人が物を売り買いする声が八方から聞こえてくる。それから人々の楽しげな会話も。

雰囲気は明るく、活気に満ちている。

…いい街だな。
なんとなくそう思った。

『……喉乾いたな』

手元の水筒を傾けてみるが音がしない。どうやら空のようだ。

『すみません』
「ん?なんだい。あんた旅の人か」
『はい。飲み水は何処で貰えますか?』
「ああ、それなら宿屋に行きゃタダでくれるよ」
『本当ですか!ありがとうございます』

街によっては水を買わなければいけないところもあるため、タダなのはありがたい。

「いいや!それより、これ買ってかないかい!?新鮮な果物だよ!」
『あ、えと…』

困った。私はこういう押しに弱い。それに情報を教えてくれた手前、余計に断りづらい。

そんなノアに商人は目を光らせた。

「飲み水のありか教えてやったんだ。買ってくれたっていいだろ?」
『い、あ。そう、ですよね…』

…仕方ないお金は正直キツいが、果物一つくらいならいいだろう。

『それじゃあ…』
「え!?なになに、果物全種類買ってくれるって!?悪いね嬢ちゃん!」
『え!?あ、あの!そんなこと言ってな』
「そうだな、全額で…」

…マズイ。まんまと丸め込まれてしまっている。だからと言って逃げるのもこの人に悪いし…。でもお金は持ってない。…どうしよう、どうしよう。そもそも始めの内に断っておけば

「おい、この人困ってんだろ」

「!?あ、貴方は!」
『?』

商人の目が大きく見開かれる。
それに聞き覚えのない声。ノアの隣には金髪の青年が居た。

「まさか無理矢理買わせてるなんてことはねぇよなぁ…」
「ま、ままままさか!!あは、あはは」

青年が少し眉を潜めて見せると商人は怯えたように必死で否定する。
…どうやら商人はこの青年が怖いらしい。私からしたらただの青年なのだが…

_ガヤガヤ 

何だろう回りが騒がしい。

「アリババ様よ!」
「本当だわ!アリババ様ぁ!!」

『…アリババ、様?』

街の一人がこちらを向いて叫ぶ。私の名前ではないし、恐らくこの青年の名前。
叫ぶ顔は憧れに近いものだ。

「っやば」
『!っわ』

青年はノアの腕を掴み走り出す。

「キャー!アリババ様!」

引き摺られる訳にも行かず、私も走る。…かなりの速さ。この青年鍛えているようだ。

なんてことに感心しながらふと後ろを振り返ると…街の人が追ってきていた。

…何この状況。街の人の顔からしてこの青年は悪い意味で追いかけられてる訳では無さそうだが…。


一体何者なんだ?


引っ張る彼にノアは眉を潜めた。


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