灰色のルフ

□光るほど影は濃く
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「ここが迷宮の跡地さ!」
『わぁ…!』

俺の隣で目を輝かせるノアさん。


正直に言おう……。


スッゴク可愛い!!


商店街で困っていた彼女を助けたのはなんとなくだったのだが、今は助けて心底良かったと思う。

薄い金色の髪は彼女の整った顔を輝かせ、やわらかな笑みを浮かべている艶やかな唇は極め細やかな白い肌によく映える。
そしてマントの上からでも分かる細過ぎない、それでいてスラッとしているであろう手足…。

ああっ…!
きっと、今まで俺がモテなかったのはノアさんと今日出会うためだったんだ!

『こんなに大きな穴…迷宮って本当に大きかったんですね…』

迷宮を想像でもしているのかノアさんは真剣な顔で考えている。
そんな大人びた表情に胸が高鳴る。

『…アリババさん。良かったら迷宮での話、もっと聞かせて貰えませんか?』

そう控えめに訪ねてくるノアさん。彼女の身長は俺より低いため、自然と上目使いになる。
……ゴクリ、と息を飲んだ。

『アリババさん…?あの、その嫌だったら別に…』
「っまさか!嫌なわけがないじゃありませんか!ノアさん!俺、貴女の為だったらなんでもやりますよ!」
『?あ、ありがとうございます』

彼女の手を取り、エスコートする。王宮で習っておいて良かったと心底思った。

彼女はそんな俺に戸惑う。そんな彼女がどうしようもなく可愛いと思う。
……もっと色んな顔がみたい。もっと彼女のことが知りたい。


今日会ったばかりなのに、俺の心はノアさんに一瞬で奪われていた。


「そういえばノアさんっておいくつなんですか?」

笑った顔は可愛らしく俺よりも幼く見えるが、思考に耽る時の大人びた顔は幾分か年上に見える。

『19です』
「な!!」
『え?』
「あ、いやー!俺より二つ上だったんで…」
『では、アリババさんは17才なんですね』
「はい!そうなんですよ!」

予想はしていたが年上。しかし、そこまで歳が離れていないことに驚く。


…よし!
ここらで男らしさをアピールしてノアさんの心を…!


拳を握りながらちらり、とノアさんを見る。

彼女は商店街にある雑貨屋をじっと見ていた。それはある一点を見ている様だが…


?…あ……!もしかして


「ノアさん、何か買いたいものあったんですか?」
『!え、いや…』

彼女は俺の言葉に動揺する。

…確かノアさんは今手持ちが少ないと言っていた。つまり…買いたくても買えない…。

っチャンス!!

「俺が買いますよ!」
『え!?そ、そんなつもりじゃ!』
「いいえ、今日ノアさんと会った記念に…俺がプレゼントしたいんです」

なるべく爽やかに、カッコよく決める。

そんな俺にノアさんは…

ノアさんは?

「ノアさん?」
『……ぁ、すみません!ぼーっとしちゃって』

彼女ははっとして俺に振り返る。しかし、どこか雑貨屋を気にしているようだ。

…そんなに欲しいものなのか?

『その…アリババさん。…私少し疲れちゃいました』

そう苦笑する彼女。

「そ、そうだったんですか!」

それならぼーっとしていた理由にも繋がる。
…なんということだアリババ!ノアさんの変化に気づかないなんて…!

「…気づいてなくて、すみません!」
『え?う、ううん!ごめんなさい私こそ黙っていて』

ノアさんの申し訳なさそうな表情に何故か俺の胸が痛くなった。

『…その、アリババさん』
「はい、…」
『私、やっぱり今日はチーシャンに泊まっていきます』

その言葉に一瞬で胸の痛みが取れる。

「本当ですか!?」
『はい』
「なら俺のとこに泊まっていって下さい!空いてる部屋もありますし!な、なんなら俺と同じでも…」
『!本当ですか!ありがとうございます!』

彼女の眩しい笑顔が俺に向けられる。

…彼女はどんな表情も美しい。
でも、やっぱり笑顔が一番綺麗だ。


アリババはそう感じる。



ノアの笑顔に影があることには気づかずに。

アリババside.end


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