灰色のルフ
□霧の団
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[第四夜 霧の団]
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「おねえちゃん……弟は」
『……』
苦しげに呻く少年_ウィルの口を覗く。
…舌まで腫れてる。これは酷い。
……でも、病気ではない。
『大丈夫ですよ。確かに酷い熱ですが病気ではありません。しっかり寝ていれば治ります』
「ほんとう!?」
『ええ』
力を使う必要もなさそうだ。
「………」
『嘘ではありませんよ、カシムさん』
未だに睨んでくるカシムさんに微笑む。しかし彼は顔を反らす。
…なかなか上手くはいかないか。
「ありがとうおねえちゃん!」
『ううん。それより、本当に病気じゃなくて良かったです』
ウィルの姉であるメアを撫でる。メアは嬉しそうに目を細めた。
「いいなぁ、メアばっかり」
「私も撫でて!」
「僕も!」
『ふふ…可愛いなぁ』
子供たちは本当に素直だ。
だからこそ…今のバルバットで暮らせば人を信用しない子供に育ってしまう。その事実に奥歯を噛む。
「…あんた、もしウィルが病気だったらどうやって治す気だったんだ?」
『えーっと…』
カシムさんに聞かれ頭を悩ます。どうやって答えようか。口では説明しづらい。
「カシム!!」
そんなとき急に女性が入ってきた。髪型がどことなくカシムさんとにている。
「!ザイナブ、どうした?」
「ハッサンが国軍にやられて目が!」
「なんだと…!」
カシムさんの表情が苦いものに代わる。…ハッサンとはカシムさんと親しい人なのだろうか。
そして今ハッサンという方は目を怪我していると。
『私、目を治せます』
「え、!?…カシム、この人は…?」
「…後で話す。それより、本当か?」
『はい。どうやって治すかカシムさんも気になっていたでしょう。実際に見てもらったほうが早いです』
「……頼む。ザイナブ、案内を」
「っでも…!」
「この人は敵じゃない」
『!』
その言葉に私が驚く。
カシムさんを見ると、もう私を見る目は鋭く無かった。
少しでも信じてくれた事が嬉しい。
…?この感覚つい最近にも…あ、そうか。アリババさんにまた会えるかって言われたときにもこんな感覚だった。
嬉しいんだ。受け入れられたことが。
「…こっちだ」
嬉しい気持ちを顔に出さないよう、ザイナブと呼ばれた女性についていった。