灰色のルフ
□ルフの導き
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ここは霧の団アジトの一室
そこで私たちは向き合っていた。
「ノアお姉さん。紹介するね、彼が僕の友達の」
「『ノア/アリババ さん!?』」
「…あ、れ?」
[第六夜 ルフの導き]
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「まさかアリババくんとノアおねえさんが知り合いだったなんて!」
そう、アラジンの友達とはついこの間会って別れたばかりの彼。アリババさんだった。
話によると、私がチーシャンを去った二週間後にアリババさんも去り、バルバッドへと向かったらしい。
向かった理由は旧友である_カシムさんと話をするため。
そして、カシムさんに霧の団の頭領になるよう頼まれたらしい。
…アリババさんがここへ来て一週間は経っている。
なのに、私はアリババさんが霧の団に居ることなど知らなかった。
それに…一週間前といえば私への隔離がされた初めの日と一致している。
…カシムさん。貴方は何をしようとしているのですか。
それから、私が聞いた内容通りシンドバッドが現れ、仲間にしろと言い、アリババさんはバルバッド国第三王子として王宮に会談しに行った。
…思っていた通り、アリババさんは凄い方だった。
「そっか…ノアさんも霧の団に」
『はい。…しかし、私は入団した訳ではなく"協力"という形ですが』
「協力?」
『実は私、資金稼ぎに傭兵もやっているんです。それで、カシムさんに雇われたんです。
こう見えて強いんですよ?』
ノアはそう言い腕を曲げてみせるが、目の前の三人はノアが戦う姿など想像できず苦笑い。
「…それで、アリババくん。王様とは話せたのかい?」
アラジンはそう聞くがアリババさんの様子からして察していた。
「話どころじゃなかったよ…。アブマドは俺のことなんか、人間とも思ってなくてさ…。色々わめいたけど…………なんにもならなかったよ…………」
そう静かに語るアリババさんは肩を震わせる。
彼の底知れぬ悔しさが伝わってくる。
「そんなことないよ、アリババくん」
アラジンの言葉でアリババは顔をあげる。
「聞こえるだろ?君が勇気を出して王様と話したことで、こんなに沢山の人たちが心動かされたじゃないか。
なんにもならなかったワケじゃないよ。今日、君が変えたことが、確かにあるよ!」
「………………ありがとう、アラジン」
少しだけアリババの顔に笑みが戻る。
『…しかし』
私は窓の外に視線を移す。
そこにはアリババと国王との会談の結果を聞くために、沢山の人で溢れかえっていた。
「"霧の団"や外にいる人に事情を説明しないわけにはいかないように思います…」
『でも交渉は決裂した、なんて…民衆の反応は大変なことになるでしょう』
「ああ……どう伝えればいいのかわかんねーよ」
「そうだねぇ…」
アリババさんは頭を抱え悩む。
同じく皆も頭を悩ませる。
…こればかりは正直に言うしかないように思えるが…。
ただ率直に言ったんじゃ、これまで築き上げてきたアリババさんの信頼と人望を失いかねない。
…どうするべきか。
_コンコン
ドアを叩く音。
それからドアが開く。
「来てください。シンが"霧の団"の皆に今日の結果を伝えるそうです」
そう言うのは、質の良い衣服に身を包んだ白髪の男性。その隣には背の高い金の鎧に身を包んだ男性…モルジアナのような赤髪だった。
『?アラジン、この方たちは』
「ああ!ノアさんは知らないんだね。こっちの真っ白なお兄さんはジャーファルおにいさんで、こっちの大きいお兄さんはマスルールおにいさん。マスルールおにいさんはモルさんと同じファナリスなんだよ」
『!そうだったんですか』
どうりで二人ともよく似た赤髪。それに、目元も似ている。
「…貴女は?」
ジャーファルさんが私を見る。
『ノアと言います。アリババさんとはちょっとした知り合いで、霧の団には傭兵として雇われていました』
「傭兵、ですか」
『はい。なので厳密には霧の団の仲間、という訳ではありませんが、このバルバッドの状況をみていられなかったので』
「そうですか…。では、貴女も一緒に来てください」
私たちはジャーファルさんに続いた。