「距離」緑×紫 シリーズ

□距離 「まずは少しずつ」 緑×紫
1ページ/2ページ

side杏果


「あーりーちゃんっ!」
「ん?なぁに、れに…」

「今日、うち、来ない?」



付き合い始めて1週間。

盛大にお祝いしてもらったあの日から、私とれにはたまーにお休みの日に会ったりして、ちょっとずつお互いのことを知っていった。


例えば、お互いの癖とか、好きな歌とか。
日常、一緒にいる中でも気づかないようなささいなことを共有する、よろこび。



…そんな中での、お家デートの誘いだった。




「…ほら。明日……、休みだし?」

れに、顔、あかい…。
……かわいい。


「…でも、私、着替え持ってないし…」
「あたしの着ればいいよぉ。ね?」

私は、れにのおねだりに弱い。
分かった、いいよ、なんて言えば、やったー!って飛び上がるれにが、可愛くて。


一緒に過ごせる時間をちゃんと、大切にしたいと思うから…

「そのかわり、今日は外食じゃなくて、一緒によるご飯つくろ?」
「えー、それほぼあたしが作るようなもんじゃん笑」

ささいなことでも隣にいてほしいと願う、私のワガママが出てきたりする。


「…じゃ、よるご飯なにがいい?」
「れにはなにがいいの?」
「ありちゃんと食べれるならなんでもいいなーっ!」

でも、れにには、ワガママなんか言わなくても、私はじゅうぶん。


「…あ。ありちゃん、顔赤い〜笑」

からかわれて、すねて。ごめんね、なんて。


そんな時間でさえ、幸せだと思う私は、バカなのかなぁ。



「…じゃ、レッスン頑張って、はやく帰ろーね」

れにの、優しい微笑んだ顔。
私が大好きな、えがお。



「…れに」

あぁ、伝えたい…。
れにに、精一杯、届けたい。



「…好き。れに、大好き……っ」

れにの顔が真っ赤になって、途端に、私にぎゅうっと抱きついた。



「…ありがと、ありちゃん。あたしもありちゃんのこと、大好き。ずっと一緒にいたい、ううん、」

…そんなに言われたら照れちゃうよ。
でも、れにの言葉は尽きることがない。

いつもは私の方が話をまとめるのは下手なのに、今は逆でなんか、おもしろい。


「……うおっほん!」
「わっ!詩織…」
「レッスン始まるってさ。…もう、イチャイチャし過ぎ!見てられない!」

もう、これだから推され隊は!なんてプンプンしてる詩織は、夏菜子にくっつきに行った。

…でも、今の。詩織に見られてた、なんて恥ずかしい…。

「ありちゃん、ありちゃん」

…?
れにが小声で私を呼ぶ。


「さっきのやつ…。家に帰ってから、ね?」


その言葉に私は、自分の頬が緩んでいくのを感じた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ