「距離」緑×紫 シリーズ
□距離 「まずは少しずつ」 緑×紫
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side杏果
「あーりーちゃんっ!」
「ん?なぁに、れに…」
「今日、うち、来ない?」
付き合い始めて1週間。
盛大にお祝いしてもらったあの日から、私とれにはたまーにお休みの日に会ったりして、ちょっとずつお互いのことを知っていった。
例えば、お互いの癖とか、好きな歌とか。
日常、一緒にいる中でも気づかないようなささいなことを共有する、よろこび。
…そんな中での、お家デートの誘いだった。
「…ほら。明日……、休みだし?」
れに、顔、あかい…。
……かわいい。
「…でも、私、着替え持ってないし…」
「あたしの着ればいいよぉ。ね?」
私は、れにのおねだりに弱い。
分かった、いいよ、なんて言えば、やったー!って飛び上がるれにが、可愛くて。
一緒に過ごせる時間をちゃんと、大切にしたいと思うから…
「そのかわり、今日は外食じゃなくて、一緒によるご飯つくろ?」
「えー、それほぼあたしが作るようなもんじゃん笑」
ささいなことでも隣にいてほしいと願う、私のワガママが出てきたりする。
「…じゃ、よるご飯なにがいい?」
「れにはなにがいいの?」
「ありちゃんと食べれるならなんでもいいなーっ!」
でも、れにには、ワガママなんか言わなくても、私はじゅうぶん。
「…あ。ありちゃん、顔赤い〜笑」
からかわれて、すねて。ごめんね、なんて。
そんな時間でさえ、幸せだと思う私は、バカなのかなぁ。
「…じゃ、レッスン頑張って、はやく帰ろーね」
れにの、優しい微笑んだ顔。
私が大好きな、えがお。
「…れに」
あぁ、伝えたい…。
れにに、精一杯、届けたい。
「…好き。れに、大好き……っ」
れにの顔が真っ赤になって、途端に、私にぎゅうっと抱きついた。
「…ありがと、ありちゃん。あたしもありちゃんのこと、大好き。ずっと一緒にいたい、ううん、」
…そんなに言われたら照れちゃうよ。
でも、れにの言葉は尽きることがない。
いつもは私の方が話をまとめるのは下手なのに、今は逆でなんか、おもしろい。
「……うおっほん!」
「わっ!詩織…」
「レッスン始まるってさ。…もう、イチャイチャし過ぎ!見てられない!」
もう、これだから推され隊は!なんてプンプンしてる詩織は、夏菜子にくっつきに行った。
…でも、今の。詩織に見られてた、なんて恥ずかしい…。
「ありちゃん、ありちゃん」
…?
れにが小声で私を呼ぶ。
「さっきのやつ…。家に帰ってから、ね?」
その言葉に私は、自分の頬が緩んでいくのを感じた。