緑さん

□一歩前へ 黄×緑
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side杏果

あと一歩だけ、進んでみればいい、
それだけなのに。

私は臆病だから、いつもあの子を見てるだけしかできないんだ…。



「…ん?杏果…なんかあった?」

今日もあの子を、無意識のうちに目で追っちゃってたみたい。

「…んーん、なんでもないよ」


あぁ、私、本当にバカ。
好きなの、って口に出せたらいいのに…


「…うそ、つかないの。泣きそうじゃん。なんかあったの?話してごらん」

なのに、ほら。優しいから。
私の隣にきて、一緒にすわる。

いつもはあんまり喋んないくせに、こういう時だけちゃんと、心配してくれて。


…ズルい。



「ね…、杏果。あたしは杏果のこと、好きだけどなぁ」

ちょっとだけドキッとしちゃった自分を怒りたい。

分かってる。メンバーとして、人として。私を好きでいてくれてるのは、たくさん心で感じてるよ。


でも…。
私は、ワガママだから、それじゃ抑えられないの。


「…ほんと、なんでもないの。ありがとね、しお…」
「じゃあなんで、あたしと話す時だけ、そんな苦しそうな顔するの…」


…悲しそうなその顔を見て、私、なにやってるんだろう、って。

「だって…。もう…、耐えるの限界で…」

嗚咽とともに出てくる苦し紛れの言い訳。
顔を見られたくなくて、俯いた。

こんなの、告白と一緒じゃん…、こんな形でなんか、言いたくなかった。


「なにに、耐えるのが限界なの…?」

私の背中をさすりながら、私からしたらいじわるに聞こえる質問をするその子。


「…好き、って、思うことに、耐えられなくて…。伝えたいのに、伝えられなくて…」
「……。それは…、あたしのこと?」


うん、なんて頷けば、私の中でガラガラと何かが、音を立てて崩れる。


…もう、ダメだ。言っちゃった。
もとの関係には、戻れない。

せめてもの、このままメンバーとして対等にいたいのに…っ、




「…じゃあ、あたしが、…あたしも。杏果を好き。って言ったら?」

なに、言ってるの、ほんと…。
そんな同情、いらないよ…


「本心で、恋愛として、杏果のこと、好きで好きで仕方ない、って言ったら?」

「…え?」


やっと顔をあげてくれた、なんてはにかむその子の顔はもう、泣きそうで。


「杏果、あたし、杏果が好きだよ。恋愛感情で、すき。…付き合って、くれませんか…?」

夢を、みてるみたい。


「私も、すき…。こちらこそ、お願いしますだよ…、詩織……っ」

気づけば私は、その腕の中に包まれていて。


離れたかと思えば、私の手の甲に、詩織の優しい、キスが落ちた。


fin.





おまけ

「…長かったね、あの2人」
「でも、詩織の背中を押して、正解だった」
「今度、玉さん達になんかおごってもらわなきゃね!」

「あーちゃん、見返りはそこ…!?笑」

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