緑さん
□雨の日の楽しみ 紫×緑
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sideれに
「…あ。雨、降ってきた」
「え、ほんとだ…!あーちゃん、ダメでしょ雨降らせちゃっ!」
「あたしだって降らせたくて降らせてるわけじゃないもん〜!」
…突然の、雨。
みんな、いつ止むのかな、なんて嫌な顔ばっかしてる。
…でも。
「ねぇ、…れに」
「ん?なぁに?ありちゃん」
今日、一緒に帰っていい?傘、忘れちゃった。なんて聞いてきたあたしの彼女は、なんだか柄にもなく、嬉しそう。
「ありちゃん、帰るよ〜?」
「…うんっ」
結局、おしごとが終わっても雨が止むことはなくて。
あたしは、なぜかルンルンなありちゃんを不思議に思いながらも、一緒に相合傘をして外に出た。
「…ありちゃんさ、なんかいいことあったの?」
「べっ…、べつに、ないよ…?」
聞いてみたら、なんだそりゃ。
可愛いな、この。
…そんな反応、あります、って言ってるようなもんだよ笑
「ふ〜ん…?」
おもしろいから、ここはあえていじわるしちゃう。
「えっ、聞かないの…?」
「聞いて欲しいの?」
いじわる。
…ごめん、ごめんって、ありちゃん〜…。
だからさ、離れていかないでよー、
くっついてないと、濡れちゃうんだから。
…ん?
「まって、これって自惚れてる…?」
相合傘は、くっついてないと、濡れちゃう。
ねぇ、もしかしてありちゃん…
「くっつきたかったの?」
「…言うな、バカ」
聞いて欲しそうな顔したのそっちじゃん!笑
でも、ありちゃんの反応を見る限り正解みたい。
ありちゃんの右手が、あたしの傘の柄を持つ左手と、重なる。
「だって、雨の日じゃないと、相合傘できないし…。それに、理由もなくこんなにれにの近くにいれるのは相合傘だけだし…」
なんなのその理由…
可愛すぎるよ…。
「…でもさ。2人で一緒に一つの傘持つとさ。…揺れちゃうね笑」
それは言わないでいて!なんてちょっと不機嫌になるありちゃんは、とにかく今の状況がお気に入りみたい。
「てかさー、くっつきたいならいつでもおいでよ〜、高さん大歓迎だよ〜?」
…まぁ、ありちゃんが自分から甘えるの苦手だ、って知ってるけどさ。
「…じゃあ、今日は、れにの家にお泊まりする」
相合傘は、それすらも甘い時間に変えてくれる魔法みたい。
「…ん、ふふ。嬉しい…」
あっ、待って、れに、揺れないで、雨に濡れちゃう、なんて。
そんなありちゃんも、愛おしい。
「…雨の日の楽しみも、アリだね」
「でしょ?」
上目遣いであたしを見上げるありちゃんは、どうだ!と言わんばかりの顔だけどそれ、逆効果。
「…じゃあ今日は、お風呂も一緒に入ろっか!」
「え…なんで」
いや…。水、つながりで……?
「訳わかんないよ、れに笑」
…でも。どうしても、って言うなら、入ってあげる。
「…ねぇ、それ、ほんとに狙ってやってないんだよね?」
「……へ?」
うちの彼女は、ちょっぴり恥ずかしがり屋。
でも。
そんなありちゃんが、あたしは大好きだよ。
fin.