緑さん
□その目線 緑×黄
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side詩織
なんだか今日は、やけに有安の目線を感じる日だった。
「え、えーと…。ありやす?」
「んー…?」
楽屋であたしの隣にぴったり寄り添って座るその姿。
いつもなら一人でエゴサしてるか、れにちゃんかあーちゃんに構われてるかなのに…。
いつも構ってる二人も今日はなぜかニコニコ、ニコニコ。
微笑んで温かい目でこっちを見てて、なんだか気持ち悪い。
あたしの隣に来て何をするわけでもなく、顔をうずめるこの子にあたしは、何か声をかけた方が良いのだろうか。
「あ、ありやす…」
「…んー?……」
さっきと全く同じ返事…笑
なに、焦ってるのあたしだけ!?
…こらっ!そこのあやたかコンビ!にやにやしてこっちを見るんじゃあないよ!
「…、な、なんで今日は、あたしのそばにいるの?」
しぼりだしたあたしの声に、隣のその子はふいと顔を上げて微笑む。
「いちゃダメ?」
「…あ、え。ん……、んん。い、いいよ、いいけど…」
いやいや調子狂うわ!
有安の上目遣いは可愛いって、悩殺レベルなんだって分かってたけど!
「………/////」
「しおり……?」
ズルい。
いつもは玉さん、って呼ぶのに。なんで、今に限って、しおり、って…。
「…あー…。しおり。わたしちょっと、ジュース買ってくるわ」
突然、今まで何も反応を示さなかった夏菜子が立ち上がった。
「え?あ…、うん……、って…」
なに。その、下手くそなウインク…。
まさかあたし、夏菜子にまでからかわれてる…!?
「ねーれにちゃん!あーちゃんも喉かわいたなぁ…」
「えっ!あーちゃんも!?あたしも乾いてたんだ!自販機いこ!」
いやいやいや待て待て待てあやたか!!!
あたし達をこの状態で二人きりにさせる気か!?
…なんて。あたしの心の叫びも虚しく、パタン、と閉まるドア。
「…しおり」
「あっ…、なに?ありやす…」
しん…、と静まりかえった部屋で、あたしと有安の、ふたりきり。
「…久しぶりにね、今度、二人でどこかに行きたいなぁ、なんて…」
「えっ…?」
「あ、違うの…!嫌ならいいの…。しおりと行ってみたいお店があったんだけど…、その……」
…今、なにが起きたんだろう。
玉井詩織、只今、心臓が跳ね上がるほどバクバクしております。
…有安からの、誘い。
昔はよく二人でお泊まりしたり遊んでたりしたけど、それも今じゃほとんどなくなって。
なのに、なんでまた…。
しかも、二人で、って。しおりと行ってみたい、って……。
「…ありやす!」
「…ん?」
「行こ!二人で!久しぶりにデートしよ!」
あたしもなんで、こんなこと言ったのか分かんないけど。
俯く有安をほっとけなくて、そしてまた、自分の心臓のバクバクをおさめたくて。
「ほんと?嬉しい…!」
「あ…、うん///」
ふにゃりと微笑む有安に、優しい、おだやかな気持ちになるあたし。
母性?これって母性なのか…!?
「たっだいまー!」
なんて思ってたら、あの三人が帰ってきて。
現実に引き戻されたような気分になって、恥ずかしくて、しょうがない。
「ちょっ…、ちょっとあたしも、なんか買ってくるわー…」
いってらー、なんて声を背中にあびたあたしの顔は、きっと真っ赤っか。
「…あれは、反則……」
デート、なんてかっこつけちゃってさ。
あぁ…、あたし。
あの、有安の優しい目が、だいすきだなぁ…。
…なんて。
そんな目線なんかに惚れたあたしは、おかしいのかもしれない。
…でも。
また、あの有安の優しい雰囲気に触れることができるのなら。
その目線に、射抜かれたって構わない…、と、思った。
オマケ 〜れに宅にて〜
「有ちゃん!やったじゃん!絶対玉さんイチコロだよ…!」
「そうかなぁ…。うまくいくかなぁ〜…」
「有ちゃんなら大丈夫!自信持って!」
「れに…、有難う〜……!よーし、今日はいっぱい飲むぞー!」
「…ちょっ!有ちゃん!飲み過ぎはダメだって〜…!」
「んふふ、れにぃ〜…」
「(あ〜…もう玉さん!!早く有ちゃんを持ってって!/// 可愛すぎてあたしが好きになりそうだわ…/////)」
fin.